この本読んどく?

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タグ:泡坂妻夫

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最近では家紋を入れないお墓も増えてきているそうだ。
それにお墓のデザインも種類が増えてきて墓地もどこかモダンな感じになってきたように感じる。
使う石によってもまた雰囲気が変わってくるのもまた不思議だ。

それでも先祖のお墓や曾祖父・曾祖母などのお墓には「家紋」が入っていたりするのではないだろうか?幼い頃の私は「こんな薄気味の悪い場所にこんなに美しいものがあるなんて」と奇妙な印象を受けたことを今でも覚えている。

そこで今日はそんな「家紋」にまつわる本、泡坂妻夫「家紋の話」を見てみようと思う。




目次

  1. 家紋の展覧会!墓地と家紋とときどき私
  2. 「家紋の話」を読む!
  3. オススメ度

家紋の展覧会!墓地と家紋とときどき私

夜道墓地の脇を通る。昼間、木の陰で薄暗くなった墓地の脇を通る。
どっちもなんとなく薄気味悪くてよく後ろを振り返りながら帰ったものだ(後ろを見るのはあんまり良くない)

しかし小学生になるとお寺の子の友人ができ、よくその子の家に遊びにいった。
鬼ごっこや野球、チャンバラ。鬼太郎ではないけれど、墓場で運動会状態だったのである。今から思うと相当罰当たりなことをやっていたわけだ。

遊んでいるうちに墓場に対する悪いイメージも消えていき、お墓に興味が出てくる。
その時こそ家紋という言葉は知らなかったが、墓ごとに様々なマークが付いているのを気にはしていた。次第に日本史に興味を持ちはじめると、当然戦国時代にも惹かれ始める。そこでもまた家紋に遭遇したわけである。

本当に暇なときや、たまたま通りかかったときなんかは今でもこっそり覗いてみたりする。この墓場に行って家紋を見るのはもはや今では趣味になってしまった。

実際お墓を歩いてみると、本当に多様な紋があるのだ。そしてどれも美しい。
自分の家の家紋の名前だけでも知っているとなんだか過去と繫がった気がしてこないだろうか?

これからお墓参りシーズン到来だが、今ではなんと「お墓参り代行」なんていうものまであるらしい。そうまでして墓参りする意味なんかあるのだろうか、というかそれは墓参りなのかと疑問である。

「家紋の話」を読む!

そんなわけで前から興味を持っていた家紋についての本を手に取ってみたのだ。
縄文時代の模様から始まり、紋の誕生から紋の盛衰。そして紋の最盛期である江戸時代についても詳しく書かれており、たいへん勉強になる本だ。

また日本人の美的センスというか、「どういったものは紋にしてどういったものは紋にしない」というコダワリのようなものも見えてきて、今まわりにある日本の文化の一端、そのルーツを垣間見ることができる。

さらにこの本の良いところは「家紋がこれならあなたの家の先祖はこれ!」といった類の本とは違い、純粋に「家紋」について書かれていることだ。そもそも名字も家紋もほとんど明治までしか辿れないだろう。なので「純粋に家紋について知りたい!」という人は読んでいてきっとニヤニヤしてしまうはずだ。

もちろん図柄入りで説明されているので安心して欲しい。
木瓜や桐、菊、卍に巴などの有名どころからそんな紋があったの!?という驚きの紋まで様々なものが紹介されている。

例えば「土星」。ほんとにあの惑星の形をした紋だ。だれがどのように、何故土星をチョイスしたのだろうか?と様々な疑問が浮かび上がってきて面白い。
また「尻合せ三つ兎」や「後ろ向き三つ兎」「蟹牡丹」「踊り蟹」など本当にあるの!?とおもわず言ってしまいそうな紋まである。
この本を読んでいるだけで目が喜ぶのを感じるのだ。

私がいちばんツボったのは「ハーケンクロイツ」を紋として見た場合なんと呼ぶかである。
観光客の中にはいまだにこの卍を見て驚く人がいるとかいないとか。似ているけど違いますよね!
そんなわけで紋として作図した場合、ハーケンクロイツは『石持地抜き隅立五つ割り右卍』となるようです。すごい! そして泡坂氏曰く、「上絵師であればこれ(石持~)を聞けばハーケンクロイツを知らなくても同じように作図できる」のだそうです。恐るべき家紋・上絵師の世界!

そしてもう一つ驚いたのが、実際に過去の「紋章集」なんかは筆者が実際墓場にいって型をとったり書き写して集めたのだという。そんな努力があるからこそ今でも様々な家紋の名前が残っているのだろう。

西洋の紋章も確かにカッコイイが、たまには家紋の美しさに目をやってみたはいかがだろうか?

オススメ度

オススメ度★★★★☆
面白さ★★★★☆
この本の良いところは、やはり本職の上絵師でもある泡坂妻夫本人が書いていることだろう。
マジシャンでもあり、作家でもあり、上絵師でもある。やはり好奇心は何事においても重要なのだろう。
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限定復刊で大きな反響を呼んでいた泡坂妻夫「湖底のまつり」が完全復刊し、全国の書店で買えるようになると同時に大きな反響を呼んでいるようだ。

美しくなったカバーと共に、帯には読み手の好奇心をそそる文字がいっぱいだ。今日はそんな「湖底のまつり」を読んでみようと思う。

目次

  1. 奇術師・泡坂妻夫
  2. 「湖底のまつり」を読む
  3. オススメ度

奇術師・泡坂妻夫

1976年に「DL2号機事件」で幻影城新人賞に佳作入選し、46歳で作家としてデビューした遅咲きの小説家である。遅いデビューでありながら体力のいる創作活動を多くこなし、数多くの小説を書き上げている。また様々なトリック・文体を使いこなしミステリーに限らず多くのジャンルを手掛けた。

1978年には「乱れからくり」第31回日本推理作家協会賞
1988年には「折鶴」泉鏡花文学賞
1990年には「蔭桔梗」第103回直木賞を受賞している。

さらに本物の奇術師としても著名であり、創作奇術に貢献した人に贈られる「石田天海賞」を作家デビュー前の1968年に受賞している。このことからも常日頃から「トリック」に親しんでいたことが窺われる。「生者と死者」に見られるような読者を楽しませることを意識した小説は奇術師としての経験、観客を驚き楽しませるというところからきているのかもしれない。

また実家は東京神田で「松葉屋」の屋号を持つ「紋章上絵師」である。
そんな関係で「家紋の話」などのエッセイを執筆していたりもする。まさにエキセントリックな小説家である。

「湖底のまつり」を読む

「なるべく予備知識を持たずに読まれることをお勧めします」と帯にもあるので、詳しくは語るまい。
が、一つだけ言いたい。
「東京創元社はセールスが上手いな!」
と。もはやこれに尽きるのではないだろうか?
この本を手に取り、読み終わった後に脳裏に浮かんだのは中町信の「模倣の殺意」だ。これは決して中身やトリックが似ていると言っているのではない。セールスの仕方が似ているのだ。

「模倣の殺意」もおそらくかなりの部数を販売したはずである。そしてこちらもネームバリュー的にも同等かそれ以上の部数を見込めるのではないだろうか?表紙カバーも今風に洗練しつつシンプルな物になっている。

読み終わった後の感想も「模倣の殺意」と同じく「入門書」という感じだ。
本が売れない売れないと嘆かれる昨今、生き残るには小説も進化していかないといけないわけで、やはり年代を経てしまったものはトリック的に劣ってしまう可能性があるのは仕方のないことだろう。

だが、1章で大よそのストーリーとトリックに見当がついて2章でほぼ確定的となってしまうのはさすがに早すぎる。

しかしながら「湖底のまつり」にはそれを補ってあまりある華麗な筆致と描写がある。
登場人物の心情描写も随所に埋め込まれた伏線とその回収も素晴らしい。

個人的には結末も好きなタイプのものだ。思わずニヤリとしてしまった。

オススメ度

オススメ度★★★☆☆
面白さ★★★☆☆
美しい筆致と伏線の回収は見事の一言。しかしながら著者の小説には他にも「しあわせの書」「乱れからくり」があるのでこれをベストと呼ぶわけにはいかない。が、面白いことは面白い。これ系のトリックの入門書には持って来いかもしれない。
湖底のまつり (創元推理文庫)

泡坂 妻夫 東京創元社 1994-06-01
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