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結婚とはなんだろうか?
始まりだろうか、はたまた終わりだろうか。
様々な偉人達が様々な価値観のもとで格言・箴言を残しているがあなたはどれに当てはまるだろうか?

今日は6月24日から公開中、ディーン・フジオカ氏主演の映画「結婚」の原作本を見てみようと思う。
※タイトルの箴言はワイルドのものである。




目次

  1. 作者・井上荒野ってどんな人?
  2. 「結婚」を読む
  3. オススメ度

作者・井上荒野ってどんな人?

戦時中の青年の姿を描いた「ガダルカナル戦詩集」や「虚構のクレーン」「死者の時」などを執筆し、戦後文学の旗手として活動した井上光晴。そんな人物を父にもつのが井上荒野氏だ。

1989年「わたしのヌレエフ」で女性限定の賞である第1回フェミナ賞を受賞(現在はなくなっている)するも、その後体調不良などの理由で小説を書けなくなってしまう。

が、2001年「もう切るわ」で再起。2004年には「潤一」で第11回島清恋愛文学賞2008年「切羽へ」で第139回直木賞を受賞。2011年「そこへ行くな」で中央公論文芸賞2016年「赤へ」で柴田錬三郎賞を受賞。

2001年再起してからは今まで小説を書けなかったことへの鬱憤を晴らすかのように多くの小説を書き上げている。また角田光代や江國香織と親交が深いようで良く対談しているのを見かける気がする。

「結婚」を読む

まず大前提としてこの小説は父・井上光晴が1982年にだした「結婚」という小説のオマージュ作品であるということを踏まえておきたい。それをうまく換骨奪胎し自分のものとして新たに作り上げたのが現在映画公開中の「結婚」である。

古書なのでなかなか光晴氏の「結婚」はお目にかかる機会が少ないだろうが、本書の西加奈子氏の解説によると『人間の深淵に肉薄しつつも、多分にサスペンス要素をはらんでいる』小説のようで、どうやら推理小説仕立てのところもあるようだ。だからだろう、ところどころその名残が見てとれる。

さてこの「結婚」であるが、内容は「結婚詐欺とそれを取り巻く女性の人間模様」である。
そしてその感情の機微というか、それぞれの女性の内面を良く描き分けているのが特徴だ。

またこの小説に登場する人物たちは、騙される女性たちも、詐欺師である「古海」も含めてみな淋しい人間のように感じてしまう。自分が騙されているのに気がついていないと言う人も中にはいるだろうが、この人物たちはそこまで馬鹿でない気がする。

ただ認めたくないだけなのだ。それを認めてしまえば自分が騙されたということを自分で自分に突きつけることにもなってしまう。要は自分を守るための防御機能が働いているともいえる。そして自分可愛さのために認めないだけでなく、彼女たちはまだ心のどこかで「古海」のことを愛しているし信じてもいる。その繋がりを断ち切りたくないだけなのだ。なのである女性は古海の身許を突き止めようと奔走するが、それもまた愛の一形態と言える。彼女もまた古海のことを忘れられないのだ。

こうしてみると古海は凄腕の結婚詐欺師といえる。ニュースなんかでは「なぜこんな男・女に騙されるのだろう?」と笑ってみていることが多いであろうこの話題。一概に「騙される方が悪い」と言えるだろうか? また騙された人たちは不幸であると言い切れるだろうか。
しかしこうして人の心の弱味につけこみ騙すということは卑劣であることに変りはない。

そしてまた終盤で古海自身もまた「一つの嘘」に縋っていたことが判明する。
そこで改めて「結婚とはどういうものなのか?」という問いに帰ることになる。
彼はその後どうするのか? 彼女は一体どうなったのか?
結末は本書内でも記されてはいない。様々な結末を描くことができるだろうがあなたは「どんな結末を作り上げただろうか?」

オススメ度

オススメ度★★★☆☆
面白さ★★★☆☆
やはり心の機微をうまく捉えているので、短いスパンで登場人物が変わっていくにも拘らず共感できる人物がいるのではないだろうか?
ちなみに現在書店ではカバーがディーン・フジオカさんになっている。今月の終わりまで待ち受け画像のプレゼントもあるようなのでファンの方は要チェックだ。
結婚 (角川文庫)

井上 荒野 KADOKAWA/角川書店 2016-01-23
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