この本読んどく?

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タグ:京都

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自分の好きな小説や漫画、映画の世界に入り込みたいと願ったことはないだろうか?
しかし、二次元の世界には現代の技術をもってしても入り込むことはできない。
その結果として、そしてその願望の現われとして所謂「聖地巡礼」が活発になっているようだ。

今回は森見ファンなら持っていて当然ともいえる「京都ぐるぐる案内」を見てみようと思う。




目次

  1. 「京都ぐるぐる案内」を読む!
  2. 気になる場所をピックアップ!
  3. オススメ度

「京都ぐるぐる案内」を読む!

京都を舞台にした小説を数多く書いてきた森見氏。デビュー作の「太陽の塔」を始め「きつねのはなし」や「有頂天家族」「夜は短し歩けよ乙女」などなど、そんな森見氏の世界に魅了され愛読しているファンの方々も多いはずだ。

そうなってくると、物語の舞台となった場所に実際訪れて自分の目で見てみたい!という欲求が出てくるのではないだろうか?

そう。「聖地巡礼」だ。
しかし実際に京都へ行ってもすべての場所を巡ることができなかったり、京都へ行く時間も行けたとしても時間が限られている!という人も多いはずだ。そんなときにいろんな意味で便利なのが本書「京都ぐるぐる案内」である。

この本は2014年、なかなか新作が出ない中発売されたものである。なのでそれ以前の作品に出てきた場所はほぼ網羅してあると言ってよい。なので「有頂天家族ツアー」を企図してその場所をだけを巡る際や、「腐れ大学生観光」などで事件の場所を目指す際にとても役立つだろう。京都が初めてでも大丈夫なように最寄駅やアクセスがしっかり書かれているのだ!

また実際に行く時間なんかないよ!という人もこの本さえあれば安心だ。
この本の内容はいたってシンプル。森見氏と共に舞台となった場所をカラー写真付きで巡ることができるのだ。作品からの引用や、森見氏の解説、想い出等も語られているのでファンにとってはたまらない。

さらにこの「京都ぐるぐる案内」にはエッセイが二篇収録されている。
こちらのエッセイも普段の小説内での森見節が炸裂しており楽しく読めること間違いない。

気になる場所をピックアップ!

伏見稲荷大社・「きつねのはなし」など〉
この本の表紙を飾るのも森見氏と千本鳥居である。その千本鳥居があるのが「伏見稲荷大社」だ。
本書の中では森見氏が「キツネ型の絵馬」を奉納している。実際に訪れて探してみるのも楽しいかもしれない。もちろん他の観光客に迷惑にならないようにだが。ここは平日でも外国人観光客で賑わっている場合が多いのだ。また出店が出ておりちょっとした祭り気分を味わえる。

京都に行くと結構な頻度で訪れるのだが、未だに最奥まで参拝したことがない。ここには自分の願いが叶うかどうか占ってくれる「おもかる石」があり、石の近くからは重い・軽いなど賑やかな声が聞こえている。

六道珍皇寺・「有頂天家族」など〉
矢二郎ファンの聖地であろうと思われるのがこの「六道珍皇寺」だ。
矢二郎が住みついている古井戸はおそらく「冥土通いの井戸」だろうと思われる。

この井戸を通って冥土に通っていた人物は「小野篁」。平安時代のもう一人のスーパーマンである。
地獄へ落ちた紫式部を救った話や嵯峨天皇との問答(子子子子子子子子子子子子の話)など様々な逸話を持つ人物である。

そんな井戸だが、特別公開時以外は非公開だったようだが、現在一般公開されているようだ。井戸に近づき矢二郎に何か相談すると返事があるかもしれない。

オススメ度

オススメ度★★★★☆
面白さ★★★☆☆
京都に住んでいる人ならまだしも、中々すべての場所を巡るのは難しい。本書に紹介されている場所から数か所に絞って観光してみるのはいかがだろうか?
森見登美彦の京都ぐるぐる案内 (新潮文庫)

森見 登美彦 新潮社 2014-06-27
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大阪万博から数十年経った今でも尚多くの人に愛されている「太陽の塔」

そんな「太陽の塔」に魅せられた女性が、森見氏デビュー作の「太陽の塔」に登場する。
今回はそんな「太陽の塔」に魅せられた女性とその女性を研究する男の物語を見てみようと思う。


目次

  1. 森見氏の過去記事はこちら
  2. 「太陽の塔」を読む
  3. 森見リンク・小ネタ
  4. オススメ度

森見氏の過去記事はこちら

夜は短し歩けよ乙女
2006年に刊行され、今年アニメ映画化もした「夜は短し歩けよ乙女」怪しげな人物や団体に翻弄される二人の運命や如何に?

ぐるぐる問答
森見氏初の対談集。様々な人物との対談を収録。モリミスト必見・必携。

「太陽の塔」を読む

「太陽の塔」は森見氏のデビュー作。2003年の「日本ファンタジーノベル大賞」を受賞し、その後山本周五郎賞を受賞、直木賞ノミネートに至った。

さてこの「太陽の塔」だが、後の森見氏の行く末を決定付けているかのようである。この太陽の塔の時点ですでに後につづく「腐れ大学生物」が出来上っている。デビュー作ながら「森見節」満載なのだ。

そんな太陽の塔なのだが、実はこの小説はヤケクソで書いたものだったらしい。それまではいたって普通の小説を書いて応募したいたのだが中々結果が出ない。そこで自身が大学時代サークルのノートに書いていたような小説をダメ元で送ったそうである。その結果「太陽の塔」でデビューするのだから何が役に立つか分からないものである。それが小説を書く上での面白い事なのかもしれない。

「森見節」満載のこの小説。もちろん主人公は「私」こと「腐れ大学生」である。しかも「休学中の五回生」ときた(桃色のキャンパスライフを夢見て日々奔走する新大学生は多いと思うが、意外にも五回生は多い。シビアな所だと卒論提出1分遅れて留年というところもある。五回生になるとどうなるか。それは呼び名が「長」とか「ボス」になる。あまり嬉しくはない)
この休学中の五回生というだけでなんだか「私」からは胡散臭さがにじみ出ているようである。しかも登場人物は「私」と同等かそれ以上に個性的な人物ばかりなのだ。そんな人物達が様々な騒動を巻き起こしていく。

そんな「私」が大学を休学してまでしていることは何か。それは自分を振った女性「水尾さん」を研究することである。その内容はというと、『研究内容は多岐に渡り、そのどれもが緻密な観察奔放な思索、および華麗な文章で記されており、文学的価値も高い』のだ、とのこと。しかも四百字詰め原稿用紙に換算して240枚。およそ9万6000字である。これを見ても分かる通り「私」がしていることは完全に研究という名のストーカー行為なのである。
しかしこれだけでは森見氏にここまで多くの女性ファンは出来なかったであろう。これで終わったら出来の悪いミステリーか気持ちの悪い男の話になってしまう。が、そうならなかったのはおそらくこの文体と、もう一人のストーカー「遠藤」との不毛な戦いがあるからだろう。

また「私」は「水尾さん」の研究をしていると言いながらも我々に前にはほとんど水尾さんは姿を現さない。情報が少なすぎるため実在するのかも怪しい「水尾さん」。植村嬢は登場場面が少ないながらもその存在感をしっかり発揮しているのに対して「水尾さん」は実在感が乏しく、透明のようである。その分なんだか浮いて見えるとともにミステリアスにも見えてくる。

さらにこの小説の登場人物はほとんどが男だ。しかもどこか哀しい雰囲気をそれぞれが纏っている。森見氏は我々読者にこれでもかとそんな哀しげな男達を投げつけてくるが、そんな男たちはどこか可愛らしく、憎むことができない。ここも女性に人気の秘密だろうか?

登場人物がハチャメチャなことをしながらもしっかりと青春小説となっているところもまた面白い。いや、ハチャメチャなことができるのは青春時代だけなのかもしれない。

そしてやはり「文字遊び」が面白い。「京大と絶縁状態」とか「右の拳をやや固めに握った」とか。この「やや固め」というところに「私」の特徴というかその人らしさが垣間見えている気がするのだ。圧巻は最後の「ええじゃないか騒動」だ。怒涛の「ええじゃないか」が登場人物と読者を襲う。「ええじゃないか」に押しつぶされそうになりながらも、やはりページをめくる手は止まらない。

この森見氏デビュー作の「太陽の塔」。これは森見氏全部詰という感じがするのは私だけだろうか。書きたいことはここに全部書いた。あとはここから少しづつ取り出して、それをまた妄想により拡大し小説として書いているのではないだろうか。とにかく森見ファンには贅沢な本である。

森見リンク・小ネタ

森見氏の作品に登場する人物や団体は他の小説にも登場することが多い。
・高藪智尚→「宵山万華鏡」に登場。

・ゴキブリキューブ→アニメ版「四畳半神話体系」に登場。麻薬的な輝きを放ち表面は常にざわついている。

・まなみ号→主人公の愛車まなみ号。名前の由来はもちろん「本上まなみ」さん。対談を行っているが緊張しすぎてほとんど話せなかったそう。

・猫ラーメン→四畳半神話体系にも登場。じつはこの屋台、モデルが存在しているようだ。時折出町柳に現れるらしく味は絶品とのこと。

・「砂漠の俺作戦」について
これはおそらく関西で有名な都市伝説の一つを元ネタにした小話と思われる。
その元ネタは梅田のHEPの観覧車に乗ると二人は別れるというもの。これは結構有名らしく、私も数人の知人から話を聞いたことがある。小説内では飾磨がHEPの観覧車がきっかけで彼女と別れている。

オススメ度

オススメ度★★★☆☆
面白さ★★★☆☆
森見氏入門には持って来いの本書。「夜行」や「狸」から入った人も遡って読んでみてはいかがだろうか?
太陽の塔 (新潮文庫)

森見 登美彦 新潮社 2006-06-01
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京都を舞台にした小説は多々あるが、最近勢いがあるのはやはり森見氏に違いない。

彼の作り出す京都をベースとした奇妙な舞台を覗くには、アニメ映画化もされた「夜は短し歩けよ乙女」が最適だろう。森見入門にも持って来いな本書を今日は見てみよう。

目次

  1. そもそも「森見登美彦」って誰よ?
  2. 「夜は短し歩けよ乙女」ってどんな小説?
  3. 「森見リンク」はあるの?
  4. オススメ度

そもそも「森見登美彦」って誰よ?

森見氏は2003年、『太陽の塔』で第15回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビューしたファンタジー・作家だ。作品のほとんどが京都を舞台にしたもののため出身地も京都かと思われがちだが、実は奈良の生まれである。

奈良と言えば「鹿男」が思い浮かぶが、実際万城目学氏とは交友があるようだ。
二人の間柄を示すような「おともだちパンチ事件(※)」は有名である。
※本屋大賞受賞式にて森見氏が初対面の万城目氏に「おともだちぱんち」をお見舞いするという事件。

森見氏は本書で山本周五郎賞を受賞。他にも「ペンギン・ハイウェイ」が日本SF大賞、「聖なる怠け者の冒険」が京都本大賞、最新作「夜行」が広島本大賞を受賞している。

氏が書く小説の主人公の多くは腐れ男子大学生だが、男女を問わず幅広い層から人気を集めている。今後の活躍からも目が離せない。

「夜は短し歩けよ乙女」ってどんな小説?

内容を語る前にまず先述の「おともだちぱんち」について説明したい。
まずこの小説の冒頭で語られるのがこの「おともだちパンチ」と鉄拳の違いである。実際に自分の手を握ってみて欲しい。鉄拳は四本の指を親指が外側から抑え込む。それに対し「おともだちパンチ」は親指を他の四本の指が包み込むのだ。
事実、おともだちパンチを繰り出そうとすると、かなりの確率で自分にダメージが返ってくる。下手をすると親指が骨折する危険性がある(小学生の頃、空手の師範から最初に習ったのは拳の握り方である。『おともだちパンチ』の握り方は危険なのでNGだと言われた記憶がある)
そんな危険な握り方、親指をそっと包み込むのが「愛」なのだ、と「黒髪の乙女」は語るのだ。

さて肝心の中身を見てみよう。
視点は「腐れ大学生」「黒髪の乙女」の視点二つに分かれる。黒髪の乙女の視点は小説では中々珍しい「です・ます調」で語られる。
対して「腐れ大学生」の視点はどこか古めかしく、ユーモラスな語り口調で進んでいく。

森見作品初見の読者はまずここで躓くことが多い。この文体がとにかく合わないのだ。
私も立ち読みをしてからこの本を購入するまで実に三か月かかっている。初めて見たのは大学生の頃だ。大学生協でオススメ!とあったので何となく手に取った。

しかし何度立ち読みしても面白さがわからない。そして普段ファンタジー系の小説を読まないことも購入を躊躇わせるのに一役買った。所謂食わず嫌いである。しかし面白くなければ売ればいいや、そんな気持ちで買ったのだが読んでいる内に戻れなくなってしまった。

売るなんてとんでもない!気が付くと私の本棚には森見氏の本が大量に購入されていた。今ではしばらく森見氏の本から遠ざかると「森見欠乏症」が出るほどになってしまった。そこで私は一つ言いたい。「森見氏の腐れ大学生ものは『スルメ』である」と。読んでるうちにだんだん味が出てくるのだ。

そして二人が知らず知らずのうちに巻き起こす珍妙な出来事・事件を経て物語は終局へと向かう。「腐れ大学生」の視点だけを追うと「恋愛小説」、「黒髪の乙女」の視点だけ追うと「ファンタジー・冒険小説」とハイブリッドなこの小説の結末は実際に読んで確かめてみて欲しい。はたして二人は結ばれるのだろうか……?

「森見リンク」はあるの?

「森見リンク」とは森見氏のキャラクターが他の小説にも登場することを指す。
「夜は短し歩けよ乙女」に出てきて他の小説にも登場するキャラクターは
・李白(有頂天家族の寿老人)
・樋口清太郎(四畳半神話体系。「きつねのはなし」の樋口直次郎の子孫か?)
・羽貫涼子(四畳半神話体系。「ペンギン・ハイウェイ」のお姉さんにもそっくりだが……?)
・千歳屋(有頂天家族の大黒)
他にも組織が跨って登場したりしている。お気に入りの人物がいたらその人物がでる小説を読んでみるのもいいかもしれない。

気になることが一つ。私はこの本に「赤川次郎」と「内田康夫」が登場している気がするのだが気のせいだろうか?そのままの名前ではなく入れ替えてはあるのだが……

オススメ度

オススメ度★★★☆☆
面白さ★★★☆☆
合計★6個
良くも悪くも入門書的な扱いにしたい。もっと濃いのが良い!と言う方は「四畳半神話体系」へ。こんな文体は嫌いと言う方は「きつねのはなし」へどうぞ。
夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)

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