kyoto-1976538_1920
変わったタイトルは一度聞くと中々頭から出ていかないものだ。

「鴨川ホルモー」もそうだろう。

鴨川はわかるとしても、「ホルモー」って何なんだ? 
変わったタイトルには、どこか人を惹きつける魅力もある。そんな「鴨川ホルモー」を今日は見てみようと思う。

目次

  1. 万城目学ってどんな人?
  2. 「鴨川ホルモー」を読む
  3. 誰が芦屋を裏切ったか?
  4. オススメ度

万城目学ってどんな人?

作者の万城目学氏は第四回ボイルドエッグ新人賞を受賞し、2006年「鴨川ホルモー」でデビュー。
その作品の多くが関西圏を舞台にしており、そんな繋がりからか森見登美彦氏とも交友がある。「おともだちパンチ事件」の被害者側である。
代表作に「鹿男あをによし」「プリンセス・トヨトミ」など。

直木賞候補5回(鹿男・トヨトミ・マドレーヌ夫人・風太郎・悟浄出立)
山田風太郎賞候補2回(悟浄・バベル)

直木賞に関しては嫌がらせか!と突っ込みが入るぐらいノミネートされている。なかなか受賞にまで至らないが、今年こそはと毎年期待されている。

「鴨川ホルモー」を読む

「鴨川ホルモー」は万城目氏のデビュー作だ。
「本の雑誌」で2006年エンターテインメント1位になると、2007年には本屋大賞にもノミネートされた。2008年には漫画化、続く2009年には山田孝之主演で実写映画化もされた。

万城目氏が森見氏のとの対談で語っているように(ぐるぐる問答参照)「ホルモー」はあくまで大学生の青春ものである。物語は主人公安倍の一人称で語られ、個性的な登場人物とともに安倍の葛藤や苦悩を描き出す。そして読者は奇妙奇天烈な「万城目ワールド」へと誘われていく。

読み進めていく上で注目すべきは「ホルモー」という競技と登場人物の名前である。
架空の競技を書く際に一番作者が苦労するのはルール説明と競技の描写であろう。説明や描写が少なければ読者は思うようにイメージできず、書き込みすぎれば物語が停滞してしまう。
その点、「ホルモー」は「オニ」達を使役、つまり自分達が軍の指揮をとる立場となり、相手が使役するオニ達を殲滅したら勝ちと極めてシンプルな作りとなっており、余計なものがない分とてもわかりやすい。さらに合戦形式をとったことで、歴史好きや大河好きはもちろんのこと、日本史や世界史の教科書中の絵図も参考に出来るためイメージが容易になっている。

さらに「オニ」自身もコワモテの通常イメージする鬼とは(外面上は)ことなり若干可愛らしい姿になっており、愛着を持てるはずだ。

ただ競技がシンプルでインパクトに欠ける分それを補うものが必要となる。
それが「オニ語」だろう。まず「オニ語」の説明からして凄い。曰く「中年男性が洗面所で吐き気を催す際の声に似ている」というのだ。それを男女問わず町中で発しているところを想像してみて欲しい。
オニを操るには通常の言葉ではなく、「オニ語」でなければならない。あの不思議な言葉を自ら声に出して考えたのかと想像すると面白い。

さらに登場人物の名前だ。
登場人物にはそれぞれ元ネタとなる人物がおり、
・安倍=安倍晴明
・高村=小野篁などとそれぞれモチーフになった人物がいる(ちなみに小野篁も晴明に負けず劣らず不可思議な逸話も持つ人物である。六道珍皇寺の井戸や「子子子子子子子子子子子子」など非常に面白い)
なので安倍と芦屋が仲が悪いのは元ネタ的には当然なのであるし(一説では晴明は一度道満に殺されている)それが物語の中にも反映されている。

そういった点を踏まえて考えると様々なことが判明する。
例えばスガ氏が仲が悪かった相手などだ。スガ氏は自分にも仲の悪い相手がいたと発言しているが相手が誰なのかは言っていない。しかし、スガ氏の元ネタが「菅原道真」であることを考えると、反りが合わない相手はおそらく「藤原時〇さん」か「藤原〇平」にでもなるのかもしれない。

誰が芦屋を裏切ったか?

そして上のことを踏まえた上でもう一度登場人物を見てみよう。
安倍派は高村・楠木・三好兄弟の五人。
芦屋派は早良・松永・紀野・坂上の五人。
本文中では高村が「早良さんがいれた」と推察しているが、結局は誰が入れたかは判明していない。これが一人称のやっかいなところなので、安倍が知らない限り、読者も知らない。

だが考察するヒントは残されている。
登場人物の松永に注目したい。彼の元ネタは勿論「松永久秀」である。この松永久秀もなかなか面白い人物で(クリスマス停戦とか安土城の元ネタ説とか世界で初めて自爆した人とか……)あるが、彼の十八番はやはり「謀叛」であろう。しかし、この本の中では彼は一度も裏切りらしい裏切りをしていない。となると、最後の投票で裏切ったのは「松永」なのではないか?と考えられる。安倍派には三好兄弟(三人衆か四兄弟かこの際どちらでも良いが、少なくとも安倍派の方が時代的に近しい元ネタの人物が多い)もいるので、やや根拠が薄弱ではあるが可能性は高いと考える。

オススメ度

オススメ度★★★☆☆
面白さ★★☆☆☆
今作最大の謎はレナウン娘なんてどっから持ってきたのかということ。どこで「これや!」ってなったんだ。それが知りたい。
鴨川ホルモー

万城目 学 産業編集センター 2006-04
売り上げランキング : 112884
by ヨメレバ
ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村
にほんブログ村 本ブログ おすすめ本へ
にほんブログ村

人気ブログランキング
blogramのブログランキング