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タグ:ミステリー

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かつてソ連に「どうやって相手を苦しめるか、次から次へとアイデアが湧いてきて、実行するのが追いつかないほどだった」と言った連続殺人鬼がいた。

彼の名は「アンドレイ・チカチーロ」
今日は彼から着想を得て書かれた「チャイルド44」を見てみようと思う。




もくじ

  1. チカチーロとソ連
  2. 「チャイルド44」を読む!
  3. オススメ度

チカチーロとソ連

この小説を読む前に押さえておきたいことがある。
それは当時のソ連が「連続殺人は資本主義の弊害によるものであり、この種の犯罪は存在しない」という見解もとで動いていたということだ。

そして二つ目がこの小説を書く際に着想を得た人物「アンドレイ・チカチーロ」である。
チカチーロはソ連に実際に存在した連続殺人鬼で「赤い切り裂き魔」などの呼び名で知られている。

彼は女子供52人を殺害した連続殺人犯だ。しかし上記にもあるように、当時のソ連では「連続殺人など存在しない」という見解であったため、組織だった捜査が行われなかった。そして犯行の魔手はソ連全土に及び、いたずらに犠牲者を増やすことになる。最終的にKGB(=ソ連国家保安委員会。プーチン大統領もここの出身)が介入し事件は解決することになる。

所謂シリアルキラーや快楽殺人者は過去に大きなトラウマを経験し、家庭環境に問題がある場合、また性的虐待や性的コンプレックスを持っていることが多いそうだが、もれなくチカチーロもそうである。

しかしコンプレックスや挫折ももちろんそうなのだが、彼が4歳の時に母親から聞いたという「お前の兄は飢餓を凌ぐために喰われた」という発言と「ホロドモール」の経験が大きな打撃を彼に与えたのではないだろうか?

ホロドモールとはウクライナ人が住んでいた地域でおきた人工的な大飢饉である。そう考えるとチカチーロは「国家が生み出した悪魔」であると言えるのかもしれない。

「チャイルド44」を読む!

このことを踏まえて小説を読んでみると、チカチーロから着想を得たというだけあって多くのことが一致している(但し年代は意図的にずらしている)。小説の事件も東はヴォウアルスク、西はキエフ、北はヴィヤトカ、南はロストフ・ナ・ドヌーなどやはり広範囲にわたって展開されている。しかしながら「実際の事件で広範囲にわたって事件が起きていたので、小説もそうした」では読者は納得しないだろう。そこは安心してほしい。しっかり理由づけされている。

またこの小説は「広範囲にわたって犯罪を繰り返す犯人を、エリートである主人公が徐々に追いつめていく」といったものではない。見どころは主人公の苦悩と葛藤、心の変遷、そして自分にとって妻とはどんな存在であるのか?というものである。

国家保安省という場所に身を置く人物が主人公なのだから、もちろん国家に忠誠を誓っている人物だ。しかも省の中でもエリートである。そんな人物は当然上が「この国に連続殺人や犯罪などというものは存在しない」と言ったのであれば、それを盲目的に信じるだろう(もしくは逆らった時の恐怖を自分が一番よく知っていることからくる保身)

しかしそんな国家に対する信奉・忠誠心に些細なことでヒビが入ってしまったらどうなるだろう?
さらに主人公と国家との関わり、自身の仕事に妻であるライーサが関わってくるため、いっそう物語は複雑になり厚みを増してくる。

上巻では主に主人公の破滅と苦悩、そして再生への道に主眼が置かれているようだ。
下巻では主人公が犯人を追跡し「驚愕の事実」に遭遇することになるのだが、これがまた面白い。本当に巧く出来ている。が、やはり主眼は犯人追跡(犯人当て)ではなく、主人公と妻の関係と今後の在り方、夫婦とは何か? 家族とは何か? ということになってくる。

そしてもう一つ注目したいのが、「強い女性」の登場である。日本だけでなく世界の小説においても様々な意味で強い女性というものは魅力的に映るようである。

アクションあり、涙あり、驚きありのこの小説。きっと一気読み間違いなしだ。未読の方はぜひ読んでみて欲しい。

余談ではあるが、この本はロシアでは発禁となっているらしい。嘘くさい噂ではあるが、実際にありそうなところがまた怖ロシアである。

オススメ度

オススメ度★★★★☆
面白さ★★★☆☆
デビュー作であるがとても面白い。レオたちの今後がどうなるのか?そんなワクワク感も持てる小説だ。
チャイルド44 上巻 (新潮文庫)

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チャイルド44 下巻 (新潮文庫)

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限定復刊で大きな反響を呼んでいた泡坂妻夫「湖底のまつり」が完全復刊し、全国の書店で買えるようになると同時に大きな反響を呼んでいるようだ。

美しくなったカバーと共に、帯には読み手の好奇心をそそる文字がいっぱいだ。今日はそんな「湖底のまつり」を読んでみようと思う。

目次

  1. 奇術師・泡坂妻夫
  2. 「湖底のまつり」を読む
  3. オススメ度

奇術師・泡坂妻夫

1976年に「DL2号機事件」で幻影城新人賞に佳作入選し、46歳で作家としてデビューした遅咲きの小説家である。遅いデビューでありながら体力のいる創作活動を多くこなし、数多くの小説を書き上げている。また様々なトリック・文体を使いこなしミステリーに限らず多くのジャンルを手掛けた。

1978年には「乱れからくり」第31回日本推理作家協会賞
1988年には「折鶴」泉鏡花文学賞
1990年には「蔭桔梗」第103回直木賞を受賞している。

さらに本物の奇術師としても著名であり、創作奇術に貢献した人に贈られる「石田天海賞」を作家デビュー前の1968年に受賞している。このことからも常日頃から「トリック」に親しんでいたことが窺われる。「生者と死者」に見られるような読者を楽しませることを意識した小説は奇術師としての経験、観客を驚き楽しませるというところからきているのかもしれない。

また実家は東京神田で「松葉屋」の屋号を持つ「紋章上絵師」である。
そんな関係で「家紋の話」などのエッセイを執筆していたりもする。まさにエキセントリックな小説家である。

「湖底のまつり」を読む

「なるべく予備知識を持たずに読まれることをお勧めします」と帯にもあるので、詳しくは語るまい。
が、一つだけ言いたい。
「東京創元社はセールスが上手いな!」
と。もはやこれに尽きるのではないだろうか?
この本を手に取り、読み終わった後に脳裏に浮かんだのは中町信の「模倣の殺意」だ。これは決して中身やトリックが似ていると言っているのではない。セールスの仕方が似ているのだ。

「模倣の殺意」もおそらくかなりの部数を販売したはずである。そしてこちらもネームバリュー的にも同等かそれ以上の部数を見込めるのではないだろうか?表紙カバーも今風に洗練しつつシンプルな物になっている。

読み終わった後の感想も「模倣の殺意」と同じく「入門書」という感じだ。
本が売れない売れないと嘆かれる昨今、生き残るには小説も進化していかないといけないわけで、やはり年代を経てしまったものはトリック的に劣ってしまう可能性があるのは仕方のないことだろう。

だが、1章で大よそのストーリーとトリックに見当がついて2章でほぼ確定的となってしまうのはさすがに早すぎる。

しかしながら「湖底のまつり」にはそれを補ってあまりある華麗な筆致と描写がある。
登場人物の心情描写も随所に埋め込まれた伏線とその回収も素晴らしい。

個人的には結末も好きなタイプのものだ。思わずニヤリとしてしまった。

オススメ度

オススメ度★★★☆☆
面白さ★★★☆☆
美しい筆致と伏線の回収は見事の一言。しかしながら著者の小説には他にも「しあわせの書」「乱れからくり」があるのでこれをベストと呼ぶわけにはいかない。が、面白いことは面白い。これ系のトリックの入門書には持って来いかもしれない。
湖底のまつり (創元推理文庫)

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心の闇、というものは中々消えるものではない。
それを心因として「トラウマ」が生まれることもあるようだ。それはしばしば私たちに悪夢を見せる。

そんな暗い雰囲気の小説を得意とする作家に道尾秀介氏がいる。
今回は今年の一月新潮社から文庫化された「貘の檻」を見てみようと思う。




目次

  1. 人間を描く・道尾秀介
  2. 「貘の檻」を読む!
  3. オススメ度

人間を描く・道尾秀介

道尾氏と言えば、2005年に発刊され賛否両論で話題となった「向日葵の咲かない夏」や月9ドラマ原作「月の恋人」、2012年に映画化された「カラスの親指」が有名だろう。
ミステリーランキングにも毎年のように名を連ね、2011年には「月と蟹」で直木賞を獲得した作家でもある。

さてそんな道尾しであるが、「背の眼」で第5回ホラーサスペンス大賞特別賞を受賞してデビューに至る。このデビュー作は今のスタイルとは全く違い、良い意味で大衆小説として面白く読める。なので最近の小説や、暗い雰囲気の物しか読んだことがないファンは驚くに違いない。この「真備シリーズ」は所謂「ミステリー」をやっているのである。

いやいや、ミステリー作家なのだから当たり前でしょう?と思われるかもしれないがそうではない。ミステリーにも様々な種類が存在しているが、このシリーズはそれこそ「犯人当て」に主眼が置かれているように思われる。

犯人当てじゃないミステリーなんてあるのか、と思われるかもしれないがミステリーという奴はそんなに懐の狭い奴ではないのである。

謎が提示され、その謎が解決される。
これで一応はミステリーの体裁は保っていることになる。「何故今朝私の目ざましが鳴らなかったのか」とか「机の上から消しゴムが消えたのはなぜか」とか「この手紙は誰が書いたのか」とか、どんなにくだらない謎であっても提示され解決されればそれで良いと言える(但し、その謎を読者が面白いと思ってくれるかはまた別問題だが)

その「謎」を書くにあたって、「殺人→犯人当て」という流れが一番書きやすく、刺激的で、読者を楽しませることができるであろうために多くの作家がチョイスしているにすぎないのである。

では今の道尾しはどうだろうか?
道尾氏が書いている小説の多くは間違いなく「ミステリー」だが、主眼は「犯人当て」ではない。つまり「真犯人がすぐにわかった=つまらない」という批評は的外れだということになる。
道尾氏はミステリーを「人間を描くために最適な道具である」と発言したことがあったはずである。氏が表現したい「人間の醜さ」や「争い」、そして「人間とはちっぽけな、無力な生き物にすぎない」というドロドロしたものを描くために「ミステリー」を使っているにすぎないのだ。

「貘の檻」を読む!

それを踏まえた上で「貘の檻」を読んでみよう。
「向日葵の咲かない夏」や「龍神の雨」にみられるような頽廃的で陰惨な雰囲気。文章から立ち上る黒い靄のようなものが見えやしないだろうか。確かに読んでいて嫌な気分にもなる。しかしそれはこの小説を通して現実世界の自分や、周りの人間を見ているからではないだろうか?

非現実の世界を味わう、体験するために小説を読みながら、道尾秀介という作家は我々の前にこれでもかと人間のイヤな部分を見せつける。

帯びに騙されてはいけない。この小説にあるのは驚愕のトリックでもなければ驚きのどんでん返しでもない。ただただ人間のイヤな部分が横たわっているだけである。

ただ一つ。道尾氏の小説は結構な確率で不幸になって終わり、その後も苦労が絶えないであろうことが予想されるものが多いが、この「貘の檻」に関しては微かな希望が見えている気がするのだ。確かにありがちな、二時間ドラマのような陳腐な終わり方かもしれない。しかしそこには救いがある気がするのだ。

そしてこの小説は辰男が過去から脱却し、漸く自分の人生を歩み始めることが出来るであろうことを予感させる、辰男の成長物語であると同時に、俊也の成長物語でもある。多感な時期の少年の心情の移り変わりにも注目したい。


オススメ度

オススメ度★★★☆☆
面白さ★★★☆☆
夢の解釈や、主人公が聞く音など解明されない謎もあるが、それをどう捉えるかで面白さがかわる小説ではないだろうか?
貘の檻 (新潮文庫)

道尾 秀介 新潮社 2016-12-23
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純文学畑にいながらも推理小説を書いた作家は意外と多い。

中でも有名なものが坂口安吾の「不連続殺人事件」だろう。今日は破天荒な人生を送った安吾が書いたこの「不連続殺人事件」を読んでみようと思う。




目次

  1. 破天荒な人・坂口安吾
  2. 「不連続殺人事件」を読む
  3. オススメ度

破天荒な人・坂口安吾

坂口安吾といえば「白痴」や「堕落論」「桜の森の満開の下」などで知られる作家であるが、実は純文学だけでなく、歴史小説や紀行文、随筆、そして推理小説まで手掛けた多彩な作家である。そんな安吾についてまず見てみたい。

坂口安吾は太宰治・織田作之助・石川淳らとともに無頼派(新戯作派)と呼ばれた純文学畑の作家だ。「純文学」と聞くと性や暴力、そしてどことなく暗いイメージを想起しがちだが、それはその人が書く本すべてに言えるわけではない。その人となりが文章に滲み出ているものが多いとしても(当然そうでなくてはならないのだが)笑えるものは笑えるのだ。純文学が苦手で距離を取っていた、という人は例えばその人が書いた短い随筆から入るといいかもしれない。その好例が太宰の「畜犬談」だ。これは青空文庫ですぐに読むことができるのでぜひ読んでみて欲しい。

安吾はどうか。
先にも書いたように、安吾は多作で多彩な作家だ。それぞれの好みのジャンルに合わせて入っていくのが良いと思うが、ここはせっかくなので随筆をオススメする。安吾の随筆はとても面白い。普通の日常・体験談をただ描いているだけなのに、そこから溢れる親近感はなんだろう。

また安吾と言えば「ゴミにまみれた部屋と安吾」の写真が有名だが、あの部屋の写真はだまし取られたものである。二年間まったく掃除をしていなかった部屋とその部屋をなんとか取りたい、というだけの「机と布団と女」という短い話もある。

さらには戦争に行っても死なないための工夫や努力を書いた「わが戦争に対処せる工夫の数々」も面白いのだが、とりわけ戦後日本の復興を支えたともいわれる「ヒロポン」の体験記「反スタイルの記」が抜群に面白い。当時軍隊でも支給され、薬局でも普通に売っていたヒロポンは覚せい剤なのだがその効果が詳しく描かれている。安吾曰く「とにかく、きく」。

「不連続殺人事件」を読む

そして安吾は推理諸説にも一家言持っていた。
「探偵小説とは」ではクリスティーを天才と褒め称え、「探偵小説を截る」では探偵小説の幼稚さを嘆き、「刺青殺人事件を評す」では乱歩の批評に反論し、今の日本では横溝が一番と語る。

そんな安吾が書いた探偵小説、それが「不連続殺人事件」である。
これは安吾が書いた初めての長編推理小説で、探偵役の巨勢博士が人物の心理、つまり動機に着目しながら推理を展開するという筋の小説だ。この「不連続殺人事件」は先の高木彬光「刺青殺人事件」と第二回探偵作家クラブ賞(現・日本推理作家協会賞)を争い、受賞している。また、雑誌掲載時には「読者への挑戦」として犯人当てに懸賞金がかけられたことでも話題となった。

いざ読んでみると、どことなく横溝物と雰囲気やテンポが似ている。
事の発端は推理小説の王道。多数の人物が一箇所に集められ、そこで謎やトラブルが起こり、ついに殺人事件へと発展。そして探偵役の巨勢博士が解決のために立上るというものだ。

純文学畑の作家が人間のどこに着目して推理小説を書いたか、「不」連続殺人とはどういうことなのかを考えながら読むときっと面白いだろう。ちなみにこの小説は登場人物が多く、そしてそれぞれ複雑な関係で結ばれているため非常に整理しづらい。相関図や登場人物を書き出しながら読むことでスムーズになるかもしれない。

余談ではあるが、雑誌が廃刊となり未完となっていた「復員殺人事件」の後半部を死んだ安吾にかわり執筆したのが高木彬光である。これもまたなかなか面白い縁ではないだろうか?

オススメ度

オススメ度★★★☆☆
面白さ★★★☆☆
セリフ回しにやや時代を感じるがそれでもオモシロイのが傑作たる由縁である。
不連続殺人事件 (角川文庫)

坂口 安吾 角川書店 2006-10-01
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御嬢様学校というものは今も昔も羨望の的なのだろうか?

実際の御嬢様学校の実態などはまったく私はわからないが、少なくともこの「暗黒女子」の世界においては生半可な覚悟では生き残れない苛酷な世界のようである。

今日は現在映画公開中でもある「暗黒女子」を見てみようと思う。




目次

  1. 秋吉理香子ってどんな人?
  2. 「暗黒女子」を読む
  3. ネタバレ感想
  4. オススメ度

秋吉理香子ってどんな人?

秋吉理香子氏は2008年「雪の花」でYahoo!Japan文学賞を受賞。2009年に雪の花を含む短編集でデビューした作家だ。他にも「聖母」「自殺予定日」「サイレンス」などの小説が現在刊行されている。

「暗黒女子」を読む

まず読んでみて思ったのは、作者は短編形式のほうが得意なのだろか? ということだ。
他の小説を読んでいないのでなんともいえないが、デビュー作も短編集のようだし、二作目にあたる本作「暗黒女子」も短編集のような形式だ。短編集は昔から売れない売れないと言われ続けているだけに、二作目はなんとか長編に持って行こうとした結果の構成だったのではないかと思われる。

そしてその短編集形式の構成が上手く機能しているのがこの「暗黒女子」だ。
小説内の人物も語っているように、学校内では主導権争いによる駆け引きが日々行われている。「誰かを貶め踏み台にし自分が上に行く」という学内生活の縮図を短編集にすることで巧く表現しているように思える。

作者が女性だけあって、現実世界の女子会もこんなことが頻繁に行われているのではないか?と疑ってしまう。表面上は仲良く見せても腹の探りあい。誰がどんな男と付き合っているか。どんなブランドを身に着けているか。どんな店をしっているか。服装は。等々どうにかして誰かの上に立ちたい、主導権を握りたいという裏の目的があるのではないだろうか。

「暗黒女子」は現在映画公開中である。
映画公開は知っていたがキャストを見て驚いた。主演に一時世間を賑わせた清水富美加の名があるではないか。また平愛梨の妹である平祐奈も名を連ねている。映画のほうは無事公開もされBD販売も決定しているそうだ。
さらに映画公式HPの「裏予告」が大変怖い。鳥肌が立った。こちらも一度見てみることをお勧めする次第である。

ネタバレ感想

面白いのだが、ミステリーとして見るとやはり弱いのかなと思ってしまう。
おそらくミステリーを読み慣れた読者は「目次」を見た時点でおおよそのストーリーと流れ、犯人と結末が分かってしまったのではないだろうか。自作小説でお互いに非難し合い、堂々巡りになるが実際手を下したのは一番の親友で、自分が主役に成りたかったからというパターンである。

そんなことを考えつつ読み進めると、案の定そのままの流れとなってしまう。
しかし三人目の自作小説内で担当顧問である「北条」の存在が明らかになると、「主役に成りたかった説」が少し揺らぐ。というのもこの女子が主役の小説で男性が出てきているということは、どう考えても登場人物の中のだれかと出来ているに違いないからである。犯人は間違いなく小百合であることを考えると、実は北条と小百合が出来ていたが、それを知りつつ応援しつつも裏で北条といつみが出来ているという、寝盗られ動機なのかなとも考えてしまう。

しかし実際は単純なように見えて深いものだ。
「互いに告発し合う輪」の中に入っていなかった小百合はどう考えても怪しい存在だなとこの頃になれば皆気がつくだろう。そして動機は結局のところ「自分が主役になるため」というものだった。
 
しかし、ここからが難しい。果して本当にいつみは死んでいるのだろうか?

まず小百合がいつみを殺す必要があったのだろうか? と疑問が持ち上がる。
普段からいつみの側にいて、いつみの秘密にも協力しており完全に感化されている小百合である。とするならば、殺すのではなくいつみと同じように相手の弱味を握りコントロールするのではないだろうか。小百合はいつみどころか澄川家に対しての弱味を握っているようなものだ。何も主役を交代するために殺す必要があったのだろうか。

この説をとると、結局のところいつみは生きており、いつみと小百合の復讐劇となる。メンバー達には恐怖を味わわせ、いつみに新たな生活を守るために自分が殺したことにし、それを仲間たちと分かち合い自分が犠牲になるというものだ。素晴らしい友情ですね。

しかしながらこの説では小百合だけ白いままでフェアではない。
とするとやはり「カニバ」に戻ることになる。この場合、伏線や環境設定がしっかり結末と絡んでいるので恐らくはこちらが正しい(様々な疑問点は残るが。例えば解体したとして、メンバーはその臭いに気づかないものなのか?という問題。闇鍋では嗅覚も敏感にとあるのだし、気づいてもおかしくはない)のだろうと思う。というのも、キリスト教系のお嬢様学校という陳腐な設定が生きてくるのだ。

小百合がいつみを殺したのも過度の信仰心故と考えれば納得できる。今まで崇拝していた偶像を突然失ったら急に反教徒になる現象を考えれば自然なことだろうと思えるのだ。また、最後のカニバの場面でもキリストの身体を分け与えるという例を持ち出し上手くキリスト教に繋げている。やはりこちらの方がしっくりくる。

しかし、小百合の今後はどうなるだろうか。
自分自身の罪を仲間と共有し、しかも仲間達の弱味を握る脅迫者の立場にたった小百合。いつみよりも物事の計画を立てるのが上手く、いつみの側で様々なことを学んだであろう小百合。「怪物」と表現するのがふさわしいようだ。しかしながら、御約束通り、脅迫者は殺されるし怪物は退治される運命にある。主役交代の日は意外と近いかもしれない。

オススメ度

オススメ度★★★☆☆
面白さ★★★☆☆
終わりよければすべて良しの好例だろう。ミステリー初心者にもイヤミス初心者にもお勧めだ。
暗黒女子

秋吉 理香子 双葉社 2013-06-19
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平安貴族や武家貴族、公家や華族など日本にも様々な貴族階級の人間がいた。

そんな貴族たちについて私たちはどんなイメージを持っているだろうか?
今日はおよそ貴族らしい探偵が登場する「貴族探偵」を見てみようと思う。




目次

  1. 麻耶雄嵩ってどんな人?
  2. 「貴族探偵」を読む
  3. 「こうもり」について(ネタバレあり)
  4. ドラマ「貴族探偵」を見て思うこと
  5. オススメ度

麻耶雄嵩ってどんな人?

麻耶雄嵩氏もあの京大推理小説研究会出身である。そこで知り合った綾辻行人・法月綸太郎・島田荘司の推薦をうけ1991年「翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件」でデビューした。

さらに2011年には「隻眼の少女」で第64回日本推理作家協会賞・第11回本格ミステリ大賞を受賞。2015年には「さよなら神様」で第15回本格ミステリ大賞を受賞した。この「さよなら神様」は7月に文庫化も予定されており、そちらも楽しみである。

また麻耶氏は「独特の世界観」や手法が特徴的であり、その癖のある作風はマニアの心を掴んで離さない。だが、前情報なしの初見で挑むといささか面食らうこともあるので注意が必要だ。

「貴族探偵」を読む

「貴族探偵」は2010年に単行本で刊行され、2013年に文庫化された。この本に収録されているのは五つの短編なのだが、それぞれ発表された時期に開きがある。
・「ウィーンの森」は小説すばる2001年2月号
・「トリッチ・トラッチ・ポルカ」は小説すばる2001年9月号
・「こうもり」は小説すばる2007年4月号
・「加速度円舞曲」は小説すばる2008年4月号
・「春の声」は小説すばる2009年9月号
と、トリッチ・トラッチ・ポルカとこうもりの間は約6年ほど期間があいている。
ネットでは「こうもり」以降は出来も良く面白いが、前二作は微妙な出来だと目にすることが多いが、果してそうだろうか?

確かにこれがシリーズものではない単発ものだとしたらその評価には納得できるが、短編集として編まれた場合前二作は導入と定着の仕事をしっかり果たしていると思うのだ。
「ウィーンの森」で「貴族探偵」とはこういうものだと読者に紹介し、「トリッチ」では毎回このパターンですと読者に釘をさす。そして「こうもり」で活躍を見せつけ、余韻をのこしつつ去って行く。
とすると、「ウィーンの森」で一番着目すべきは「貴族探偵」がどのように我々の前に現れたかではないだろうか。事実「ウィーンの森」での登場の仕方が一番図々しく、印象に残るようになっているはずだ。

またこの「貴族探偵」は麻耶氏の他の作品と比べると癖が比較的抑えられている気がするのも事実だろう。「麻耶ワールド」なるものを感じることは少ない。しかしながらそこはやはり麻耶氏の書く小説である。この貴族探偵は探偵と言いつつも自身は全く探偵らしいことはしない。いわゆる安楽椅子探偵でもない。そこに麻耶氏の拘りが感じられる。

また登場人物の名前が変に奇を衒っていないのが良い。普通の探偵小説であれば探偵が推理するのでどんな名前をつけようが注目されることになる。しかし「貴族探偵」では貴族探偵が探偵の役割を放棄している。推理を披露するのは召使いたちなのだ。ではどうやって「貴族探偵」の存在感をアップさせるか。それは召使いたちの名前をよく耳にする名字にすることで解決していると思われる。それぞれ山本・田中・佐藤とすることで変にかれらがでしゃばって来ることがないのだ。彼らを下げることで貴族探偵を上げていると思われる。

「こうもり」について(ネタバレあり)

各方面で話題の「こうもり」。確かにすばらしい出来だった。
これを読んで思い出されるのは麻耶氏の長編小説である。
トリックとしては逆叙述+替え玉
しかしこの逆叙述というものが曲者で、登場人物は知らないが、読者は知っているというものなのだ。登場人物はてっきり知っていると思っていたと、ここに驚きが生じる。
今回の場合、絵美と紀子が貴生川を大杉と思っていた、つまり二人一役を認識できていなかったこと、そこに貴生川を貴生川+大杉の二人に見せかける一人二役のトリックが働いている。
また読者に対して貴生川を貴族探偵と誤認させること、絵美の彼氏だと思わせることで貴生川を嫌疑の外に置くよう仕向けている。
伏線もしっかりあるのだが、非常に巧妙に仕組んであるためなかなか気づかなかった。短編でよくここまでという素晴らしい出来である。

ドラマ「貴族探偵」を見て思うこと

初回放送が終わった後は大絶賛の嵐だったらしい。原作ファンも嵐ファンも納得の出来だったと。それは本当だろうか? 私は正直見ている最中に恥ずかしくなってきて消してしまった。

昨今視聴率が下がり、製作費が少なくなる、そしてまた視聴率がとれないというループに嵌っているドラマ。脚本家の書き下ろしにしても率がとれないのであまり払えない。そこで各局が血眼で探しているのはすぐドラマ化できそうな「ミステリ小説」らしい。そしてドラマ化の必須条件となっているのが、「美しく、強い女性の活躍」なのである(イケメンで強い男性ではだめらしい)。そうして見てみると、たしかに最近ドラマ化されているものの多くはこの必須条件にほとんど当てはまるようだ。原作には全く関係ない女性キャラが登場するのはこういう理由がある。そんなわけで「貴族探偵」は麻耶氏が意識していたかどうかはわからないが、ドラマ化の必須条件を満たしていたといえる。

また各話にその話限りのヒロインを登場させることができるのもこの小説の強みであろう。これで女性役もさらに確保でき、パターンの打破に光りがみえる。さらにこの「貴族探偵」が短編集であったことも有利に働いたはずだ。

「すべてがFになる」のアニメとドラマを思い出していただきたい。
まずドラマはF~パンまで前編・後編という形で放送したが、これは成功したとは言い難い。というか酷かった。一つの話を二週に分けて放送するのは最終回だけなら特別感があっていいかもしれないが、常時だとこちらの興味を失わせかねない。が、長編を一時間枠でやるのはやはり無理がある。

一方アニメは1クールすべてFを放送した。だが、これだと毎回谷・山を作りづらく見ていて飽きてしまう可能性がある。

だが、短編では作者があらかじめ谷・山を作っているので深く考える必要がない。
そう。深く考える必要はなかったのだ。原作のまま、メイドも変に年上にせず、若いままでよかったのだ。そこにギャップがあったのだ。それを構成か脚本家か知らないが原作の良さを完全に潰してしまっている。

そして駄目押しは「鼻形雷雨」というオリジナルキャラクターの登場だ。まず名前が駄目。せめてもっとオリジナリティあふれる名前にしてほしい。しかもこの性格付けが最悪である。貴族探偵の周りは良くも悪くも個性的な人物達で固められている。なので彼らを周囲から浮いているようにしなければならないはずであった。つまり個性的な人物は貴族探偵の周辺だけで良かったのだ。オリジナルの警察キャストを出すのであれば、こんな三文芝居のような人物ではなく、しっかりとした警察ドラマのような人物を出すべきであった。鼻形に関しては最近不要論が起っているらしいが、そんなもの最初から不要である。叩き上げの段階でもう終わっている。キャストが豪華で、実力がある人たちも揃っているだけに本当に勿体ない。

そして小説を読み返して思ったが、この「貴族探偵」はコメディの皮を被った別ものなのでないか。コメディとして考えてキャスト組んだ場合たしかにベストの布陣に見えるがそうでなかったのではないか。だからちぐはぐ感が漂っているのではないだろうか。

オススメ度

オススメ度★★★★☆
面白さ★★★☆☆
癖もなく万人受けするはずだ。ドラマを見限った人も小説だけは読んでみて欲しい。
貴族探偵 (集英社文庫)

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辞書を引くと「クリーピー」とは「身の毛がよだつような、気味の悪い」という意味だと教えてくれる。

本書もそのタイトル通り、どうも気味の悪い内容となっている。サスペンスホラーよりの本書を今日は見てみようと思う。

目次

  1. 作者の前川裕ってどんな人?
  2. クリーピーを読む
  3. 生きているのか死んでいるのか
  4. オススメ度

作者の前川裕ってどんな人?

作者の前川氏は法政大学国際文化学部の教授である。専門は比較文学・アメリカ文学だそうだ。
故に本書が最初の出版というわけではなく、英語関連の本(英会話・入試英語等)が前から出版されている。

小説に関しても「クリーピー」より前に「人生の不運」(現在は「深く、濃い闇の中に沈んでいる」と改題し、文芸社文庫から刊行されている)が出ているが、こちらはおそらく自費出版であったろうと思われるので、「クリーピー」が商業作家デビュー作ということになる。

そんな前川氏であるが、2011年に第15回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞、翌2012年に本格的に作家デビューを果す。やはり教授という仕事柄、文章を書き慣れているだけありデビュー作ながらとても読みやすい(ただし「~た。」が多いが)

クリーピーを読む

ミステリーの中でも「サスペンスホラー」よりと思われる本書。
だが、純粋な意味での「ホラー」とはまた違った怖さが潜んでいる。

本作の主人公は「高倉」。職業は大学教授である(小説内における昨今の大学教授は現実以上に大忙しである)。これは前川氏自身の投影であろう。

前川氏自身も教授ということで、ゼミや講義などで多くの学生たちと接してきたのだろう。学生の服装や話し方、ゼミの後の飲み会など、自身の経験を上手く使い小説内のリアルさを増している。

さらに穿った見方をすれば「ああ、この人(教授や講師の方々など)は普段こんなふうに学生を見ているんだな」という読み方も出来なくもない。前川氏自身の経験談なのではないか? と勘繰ることもでき、話の大筋とは全く関係ないがそんな楽しみ方もできるのも嬉しい。

さて物語は犯罪心理学者である高倉のもとに事件分析の依頼が届くことから始まる。その依頼以降、高倉の周囲で事件が頻繁に発生するようになってしまう。そして自身も事件に巻き込まれていく。

この犯罪心理学者の元に事件の分析が届き、そこから様々なことが発生するという流れだが、主人公の職業と結びついている(ように感じる)ので、物語の中に入っていきやすい。
この小説で最も重要なのがこれで、この話が現実でもあり得そうと思わせることなのだ。これがなくなると本書の面白さは半減どころか、成立も難しくなってくる。サスペンスとホラーの醍醐味が失われかねないからだ。だからこそ主人公の職業も前川氏自身が一番よく知っている職業にし、リアルさを出すために随所で工夫をしている。

だが、「クリーピー」はただ怖いだけでなく、アッと驚く展開も待っているので読み応えのある小説となっている。

そしてこの小説は現在社会へ問題を投げかけているようにも感じられるのだ。
たとえば、この小説の一番の肝、怖さの元は「隣人は誰なのか?」ということになるだろう。その疑問が不安に、そして確信へと変化していく展開が面白く先が読みたくなるのだが、これは現在だからこそ起こる不安ではないだろうか?
一昔前は近隣と付き合いが無い方が異常で、そんな状態を村八分と言ったりしていたはずだ。
だが村八分の状態でも火事や葬儀の場合は協力があったので、もしかしたら現在のほうがもっと稀薄かもしれない。だからこそ、近隣で事件が起こった時に疑心暗鬼に囚われる。
「隣に住んでいる人は善人だろうか?悪人だろうか? 生きているのか?死んでいるのか? まったくわからない」という状態が発生するのは現在だけだろう。

隣近所の付き合いが親密であれば、例えば、自分が仕事に行く間子どもを見てもらうということも可能であった(何かされるのではないか?という考えは無いというよりも恐らくタブー)
しかし現在はたとえ親密であったとしても自分の子を預けるということはしないだろう。相手を信用できないからだ。(ではなぜ他人であっても保育園や幼稚園には安心して預けれらるという考えが揺らがないのかは疑問だが。ただし最近ではそれすらも安心できない事件が起きている)

そんな問題点を含んでいるのがこの「クリーピー」だ。現代生活の不安や疑問を上手く昇華させている。

生きているのか死んでいるのか

若干のネタバレになるので未読の方はスルーしていただきたい。
本書では結局「矢島」は死んでおり、そのことを知っているのは限られた数人だけであり、「矢島」は現在も逃走中となっている。

だが果してそうだろうか?
高倉はあくまでも園子が「矢島だ」と言った死体を見ただけである。この死体が矢島でない可能性は大いにあり得る。さらに園子も矢島を庇う理由があるのだ。
もう一つ疑問点がある。いくら閉め切った部屋とはいえすべてのものの侵入を防ぐことはおよそ不可能に近い。そう。虫だ。そんな状況下で十年も死体があることを隠し通せるだろうか。それに十年ものの死体に皮膚が付いているものなのだろうか。ミイラ化したとしたら都合がよすぎるではないか。

流れ的にはやはり、死体は替え玉、本人は生きていて逃走中という方がしっくりくる気がするのだ。

オススメ度

オススメ度★★★☆☆
面白さ★★★☆☆
本書は去年西島秀俊主演で映画化されている。キャストも豪華で、特に香川照之の好演が見どころだ。
クリーピー (光文社文庫)

前川 裕 光文社 2014-03-12
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その小説内に書かれていることほぼ全てが伏線であり、またメタ的要素を多分に含んでいる小説があっただろうか?

今日紹介する「首無の如き祟るもの」はそんな小説の一つだろう。これを読めばあなたもきっとミステリー、いや読書が好きになるはずだ。あなたをきっと驚きの連続へと導いてくれる。

目次

  1. 三津田信三とは?
  2. 流浪の怪奇小説家・刀城言耶
  3. 実際読んでみて~ネタバレ無し~
  4. 実際読んでみて~ネタバレ有り~
  5. オススメ度

三津田信三とは?

ミステリーランキングの常連と言っても過言ではない三津田氏。
代表作は「刀城言耶シリーズ」や「死相学探偵シリーズ」だろう。そんな三津田氏は出版社勤務を経て、2001年「ホラー作家の棲む家」で小説家デビュー(1994年に鮎川哲也が編集を務めた公募アンソロジー「本格推理3 迷宮の殺人者たち」に「霧の館 迷宮草子」が採用されている)

その後、ホラー小説やミステリー小説を精力的に発表を続け、2010年には「水魑の如き沈むもの」が第10回本格ミステリ大賞を受賞した。

刀城言耶シリーズは「幽女」以降出ていないのだが、今年こそはと期待している。

流浪の怪奇小説家・刀城言耶

そして「刀城言耶シリーズ」の多くで探偵役を務めるのが刀城言耶だ。
元華族の血筋である。ジーンズを愛用し、行く先々で奇異な目で見られている。そして何か面白そうな「怪異譚」が聞けそうとと分かると態度が豹変。場所相手を問わず、相手が話すまでしつこくまとわりつくスッポンのような人物だ。しかしながら最初から怪異を信じきっているわけではなく、合理的解釈が必要な場合はそのような判断を下す。

しかしどこか憎めない人物である。その点では「金田一」に近いものを感じる。そんな刀城言耶が事件を引き寄せるのか、それとも言耶が事件に引き寄せられるのか。出かける先々で事件に遭遇し、不本意ながらも探偵役を務めることとなる。

そして時系列だが、
「厭魅」→「凶鳥」→「首無(事件発生)」→「山魔」→「水魑」→「幽女」→(首無事件解決)となりそうである。番号順に読むと微妙につながらない時があるので、帯の順番で読むことをお勧めします。

ちなみにこの「刀城言耶シリーズ」はほとんどの作品が何かしらのミステリランキングに選出されている。

実際読んでみて~ネタバレ無し~

旧家・怪異伝承・首無し死体・どんでん返し等々ミステリ好きには堪らない要素満載である。
しかし、怪異現象や諸所の設定に現実味を持たせるためにやはり文章は多くなっており、600P越えとなっている。だがページ数を気にさせないほどの面白さがあるので、量はさほど気にはならない。

この要素(旧家の対立・双子など)だけ見ると、横溝の二番煎じか……と思われる方もいるかと思うがそうではない。横溝やカーの世界では装飾でしかなかった「ホラー」という要素をミステリーと対等の関係で融合できないだろうか? と思案した結果生まれたのが「刀城言耶シリーズ」なのだ。そして「首無」ではそれが結実したと言ってよいだろう。

だが本作はその中でも異質である。というのも「言耶」はほとんど登場しない。
この物語は斧高という少年の視点と、私こと高屋敷妙子の視点で語られている。言耶が登場するのはほんの数場面しかないのだ。

また、今作にもシリーズ恒例のどんでん返しの波状攻撃、さらに○○の分類(今回は顔の無い屍体の分類)もしっかり存在しています。

さらに今回も参考文献にちゃっかり架空の人物を混ぜたり(閇美山犹稔)、「書斎の屍体」(架空の雑誌)に実在人物を登場させたり(幾守寿多郎以外は全員実在の人物。タイトルは微妙に変更してある)遊び心満載である。

また三津田氏も「江川蘭子」が好きなのか、ちゃっかり登場している。

実際読んでみて~ネタバレ有り~

ではネタバレありで見てみよう。
未読の方はスルー推奨である。


①江川蘭子に関して
以前も書いたが序盤(~50Pぐらいか)に緻密な伏線を張り、かつ上手く回収できている作品は傑作になる可能性が高い。本書も例にもれず、わずか3P目で犯人に関わる重大な伏線(~その一部は)が張られている。また「はじめに」でも核心にせまる重要な伏線が多く張られているが、中でも「一連の事件の真犯人が私(=書き手)自身ではないか」という疑問に対しての否定が後々重要となってくる。さらにここでは蘭子の説明は「本格推理」作家となっている点も見逃せない。また細かいが、「江川蘭子」は世が世なら侯爵という部分。華族令を参考に見てみて欲しい。

②長寿郎と妃女子に関して
ここが本作の最大のポイントである。これが解ければ一気にほとんどの疑問が解決へと向かう。
まず注目すべきは出産の際のカネの行動と兵堂の表情だろう。出産は現在でもかわらず重要なものとして見られている。出生率が低かった過去では尚更、さらに跡継ぎが絡めば重要度は増すのは当然だろう。そこでカネは「禁厭・呪い」を施しているのだが、今の考えから行けばその呪いが意味するものは安産であろう。しかしながらここに淡首様という問題が絡むことでその禁厭は別な意味も併せ持つことになる。安産は当然として、いかにして神から逃げるかである。子供は「七つまでは神様の子」であると信じられてきた経緯がある。そんな事情からカネは強力な禁厭を施すことになった。そこを考えてみると、女の子が生まれた!と聞いた時の兵堂の表情にも納得が行くだろう。
また、死亡後の葬儀の仕方である。なんとなくだが、私は勝手に三津田氏は「葬儀」の方法や種類に強い興味を持っているのではないかと考えている。なので葬儀について考えると結構謎が解けるパターンも多いのだが、今回も葬儀が重要な伏線となっている。土葬が中心の村で(1967年時では火葬67%、土葬33%だったらしいので、この時代設定がそれよりも以前であれば土葬の割合も増えているであろうと考えられる。よってそこまで土葬は珍しいことではない)火葬をしたという点に着目してほしい。ミステリーで何かが燃えたらそれは「何かを隠そうとしている」と疑うべきである。

③刀城言耶について
この「首無」は「刀城言耶」シリーズのナンバリング作品ではあるが、言耶はほとんど登場しない。
第10章・旅の二人連れ以降、言耶は一切登場していない。ではこの時「本物の言耶」はどこにいたか。「首無」の事件の裏で、奥戸の「山魔」事件と関わり合い、そっちに行っていたのである。これは「水魑」内での会話で確認が取れる。また同時に「水魑」では、まだ「蘭子」が生きており、「血婚舎の花嫁」を連載し始めたことが語られている。
解決編で登場する言耶が本物ではないと考えることができる要素もある。
・「15歳は下に見られるでしょ」という発言
・未知の怪異譚を聞いても無反応
など細かいがしっかりと伏線が張ってある。

ではこの場面に登場する「言耶」は誰だったのだろうか。
様々な考察が可能だ。これは実際読んでみて自分なりの考えを導き出したほうが楽しいだろう。

オススメ度

オススメ度★★★★★
面白さ★★★★☆
鮮やかな伏線回収と緻密な設計で書かれた本書を一度読めば他のシリーズを読まずにはいられなくなるだろう。
首無の如き祟るもの (講談社文庫)

三津田 信三 講談社 2010-05-14
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昨今誰もが気軽に小説を書ける時代になった。ネット上にも小説やSSが溢れ、さらにはそこから商業作家へとデビューしていく人もいる。

だが小説を書こうと思っても、何を書けばいいのかわからない、どう書いたらいいのかわからない、そんな人も多いのではないだろうか?

今回はそんな人に役立つ小説指南書を紹介していきたいと思う。少しでも役に立てば幸いだ。

目次

  1. 「物語の体操」大塚英志
  2. 「ミステリーの書き方」 日本推理作家協会編
  3. 「売れる作家の全技術」 大沢在昌
  4. 「小説の技巧」 デイヴィッド・ロッジ
  5. 「場面設定類語辞典」 アンジェラ・アッカーマン+ベッカ・パグリッシ
  6. まとめ

「物語の体操」大塚英志

物語の体操 物語るための基礎体力を身につける6つの実践的レッスン (星海社新書)

大塚 英志 講談社 2013-08-23
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元朝日文庫から出ていた「物語の体操」を星海社新書から新しく刊行。
本書の最大の特徴は「課題形式」にある。ただ読むだけではなく、こちら側も出された課題をこなす必要があるのだ。

第1講ではいきなり「プロット100個作成」という課題を突き付けられる。しかしその作成に至るまでの手順、さらには裏ワザを教授してくれているので、初心者にはありがたい本だろう。

その後もレッスンが続くのだが、全ての課題をこなし終わった後には自分自身の成長を実感できるはずだ。

この本は初心者にオススメだ。
特にどう書いたらいいかわからない・話が作れない・話に矛盾が出るという人はこの本を熟読すると良い。

「ミステリーの書き方」 日本推理作家協会編

ミステリーの書き方 (幻冬舎文庫)

日本推理作家協会 幻冬舎 2015-10-08
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総勢43人もの現役作家が自身の執筆方法や、アイデアの構想方法などを披露する。
「ミステリーの書き方」と銘打っているだけあって、内容はミステリーに特化しているが、「小説を面白くする方法」や「プロットの作り方」「セリフ回し」などはどのジャンルにも共通することが書いてあり大変参考になる。

また、アイデアの発想方法、伏線の貼り方、トリックの仕掛け方などなど作る側にも読む側にも興味深い内容となっている。

さらに有難いことに、巻末には「ミステリーを書くためのFAQ」まで設けてあり、書き手が一度は思うであろう疑問や不安が箇条書きで一覧になっている。気になった時はすぐ探せるのはありがたい。

この本は初心者~中級者向けだ。
小説を書いているということが前提になっている。しかし書く際には非常に参考になること間違いない。ミステリーを書くなら必須級と言える。

「売れる作家の全技術」 大沢在昌

小説講座 売れる作家の全技術 デビューだけで満足してはいけない

大沢 在昌 角川書店(角川グループパブリッシング) 2012-08-01
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小説・野生時代誌上にて連載していたものが本として刊行された。
作家てこんな仕事なんだ!ということも分かる非常に良い本となっている。作家を目指すのであればもう既に作家の懐事情や出版業界の今なんて分かりきっていると思うが、この本を読んで改めて「それでも自分は作家になりたい!」と思える人は作家への道は開かれるだろう。

この本はとにかく非常に丁寧でわかりやすい。
初心者がやりがちな失敗を例を見ながら追えるというのも有難い。特にキャラクターの作り方や会話文の秘密、文章と描写力を磨けなど適切なアドバイスが多い。

本書の中で大沢氏が何度も言うことは「本を読め!」と「小説にはトゲが必要」の二点だろうか。
特にミステリーを目指すのであれば1000冊は読む必要があるとのこと。その通りだ。読書は書くための準備運動、筋肉作りなのだ。読書をしない人間がデビューをしてもすぐ消えていなくなるのはもう分りきっている。

この本は初心者から中級者向けだ。
本気で作家を目指すのであれば一度は目を通しておきたい本だろう。

「小説の技巧」 デイヴィッド・ロッジ

小説の技巧

デイヴィッド ロッジ 白水社 1997-06
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小説にはどんな技法・技巧が使われているのか?それを例文と共に詳しく解説したのが本書だ。
書き出しから始まり結末まで実に50もの技巧が紹介されている。

特に作家を一番悩ませるとも言われる「書き出し」、ただの説明になってしまい、場を停滞させがちな「人物紹介」は熟読すべきだろう。

また、なかなか日本では使われない技巧も多いので、それを自分の小説の中に生かすにはどうしたら良いか?などを考えながら読むと一層自分のためになるだろう。さらにこの本自体が優れた本の紹介本とも言える。例文にある小説は殆んど有名作ばかりなので読み漏れが無いようにしたい。

この本は上級者向け。
今のままでは駄目、もしくはより上を目指したいという人にお勧めだ。

「場面設定類語辞典」 アンジェラ・アッカーマン+ベッカ・パグリッシ

場面設定類語辞典

アンジェラ・アッカーマン,ベッカ・パグリッシ フィルムアート社 2017-04-25
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今年の4月28日に出たばかりの本がこちら。
「辞典」と銘打ってあるが、読み物に近い出来である。とにかく「設定」の重要さ、大切さを説く。この本ははっきり言って紹介したくはなかった。それほどこの本が手元に有るか無いかで小説の出来、面白さが違ってくる。見せるべきか述べるべきかなど、とにかくそれぞれの「設定の繫がり」を重要視し、豊富なアドバイスを提示してくれている。

後半部は郊外と都市とに分かれ、五十音順に場面が紹介されている。さらにその場面ではどんなことが起こり得るか?またどんなものがあるか?匂いは?など見落としがちな要素、また何か謎に繫がる要素を箇条書きでまとめてくれている。さらにその場面設定で得られる効果、設定のヒントなども載っており読んでいるだけで物語が頭の中に湧いてくるようだ。

巻末にはエクササイズやプランニングツールもあり、創作する際に役立つはずだ。

この本は初心者から上級者までほぼ必須と言える。
読んで楽しい、作って楽しい、創作の醍醐味が味わえる。

まとめ

どうだっただろうか?
今日紹介した本以外にも様々な本があるが、まずは気に入ったものを読んでみて、小説創作を始めたり自身のレベルアップに繋げてほしい。
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数多くの小説が毎年出版される中、かつてここまで狂ってる小説があっただろうか?

2006年に出版されるやいなや様々な方面で物議を醸し出したこの「独白するユニバーサル横メルカトル」そんな本を今日は見ていこうと思う。


目次

  1. 怪人・平山夢明
  2. そして被害は拡大す
  3. C10H14N2(ニコチン)と少年――乞食と老婆
  4. Ωの聖餐
  5. 無垢の祈り
  6. オペラントの肖像
  7. 卵男
  8. すさまじき熱帯
  9. 独白するユニバーサル横メルカトル
  10. 怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男
  11. オススメ度

怪人・平山夢明

作者・平山夢明とはどんな人物なのだろうか。
平山夢明氏は実話怪談や、超怖い話シリーズ、東京伝説シリーズなど多くのホラー・怪談物を手がける傍ら、多くの短編集も発表している人物だ。

2010年には「ダイナー」(カバーとても美味しそうな写真!)で吉川英治文学新人賞最終候補。第28回
日本冒険小説協会大賞、第13回大藪春彦賞を受賞した。

そして問題の本書「独白するユニバーサル横メルカトル」は2006年に誕生。後に多くの被害者(?)を出すことになる――。

そして被害は拡大す

手始めに光文社刊「異形コレクションシリーズ/魔地図」に寄稿した「独白するユニバーサル横メルカトル」で、2006年の日本推理作家協会賞短編部門賞を獲得。たしかにこれはまだ納得できる。本書の中でもまだまとも(?)なので、一般人にも引かれることはないだろう。さらに「これはミステリーです!」と言われると、なんだか納得してしまいそうな出来である(実際ミステリー)

しかしどこで手違いが起ったのか、同タイトルの短編集が2007年度版「このミステリーがすごい!」で国内部門1位を獲得。「このミス」といえば年末ミステリー大賞の大御所である。そこで1位を獲得すれば、当然大きな売り上げが見込める。

――そこで何が起ったか?
これは憶測だが、このミスや文春ミステリーの上位に入った本を何も考えずに(下見せずに)買う層が多くいたのでは、と考えられるのだ。ミステリー買ったつもりが何だかおかしなものが紛れている。つまり異物混入事件である。その結果、多くの被害者を生みだすことに成功したのだ。(私もそんな一人)

そう。この本にあるのは狂気である。あらん限りのエログロ・残酷描写・胸糞描写を詰め込んだスプラッター寄りのホラー小説だったのである。ミステリーの皮を被ったホラーなのだ。

そんなミステリー成分少なめの短編集の中身を見てみよう。

C10H14N2(ニコチン)と少年――乞食と老婆

たろうくんを主人公とする現代版童話、暗黒童話のような物語。学校でいじめにあうたろうは、逃避行動からか子供が近づいてはいけない湖へと向かう。そこで一人のホームレスと出会う――

「冒頭になんてもん持ってきやがる!」
これが私の率直な感想である。立ち読みしたらそっと棚に戻すであろうこと間違いなし!
文体はですます調で、おとぎ話らしい雰囲気は出ている。しかし登場人物はそろいもそろって腹立つようなのばかりである。食事中読むことはお勧めしない。

読み終わったらもう一度タイトルを声に出して読んでみよう。脱力必至である。

Ωの聖餐

「俺」はとある事情から「ある動物」の世話を命じられた。しかしそいつのエサは人間の死体だった――

一話目とは異なりとにかくグロい。そしてなんだか臭い。
カニバリズムどんとこい!という方にはオススメだ。しかし、ただのカニバではなく、そこは作家である。少し面白い趣向が凝らしてある。

ちなみにカニバと聞いてもピンとこないかもしれないが、日本でも割と最近まで人間の内臓や胎児の黒焼きが病気に効くという俗信が信じられていたりだとかで、そんな事件が起きている。

無垢の祈り

義理の父からは暴力を受け、頼みの母は宗教に染まる。そんな家で暮らす少女が救いを求めたのは連続殺人鬼だった――

これが一番きつい。精神にダイレクトアタック。
女児が義父から虐待され、それが原因でクラスでもいじめられる。そして殺人鬼に援けを求めるしかない状態になっていても誰も助けようとはしない。見てみぬふりという現在の社会を痛烈に諷刺しているように思われる。

結末はどちらともとれる。だが本書は「ホラー」であり、救いがないということが「祈り」のテーマである気がする。そして伏線を踏まえて「それ」が何であるか考えるとふみがどうなるかは自ずと判明するはずだ。

オペラントの肖像

「オペラント条件付け」が徹底された世界。この世界では芸術が人を堕落させる悪であるとして批判され、所持しているだけで死刑となる。そんな芸術を信仰する人々を取り締まる主人公はひょんなことからカノンという女性を救おうとするが――

ディストピア小説。砂漠で発見したオアシスのような安心感を我々読者に与えてくれる。
SFの王道ではあるが、短編ではやはり無理があったか。中・長編で読んでみたいと思うがどうだろう。

卵男

連続殺人鬼である私こと「卵男」。奇妙な岩牢に移送され死刑になる日を待っていたが、ある日205号と名乗る男が現われる。私は205号と次第に会話をするようになるが――

これもSF色が強い。作品の出来、面白さではこの短編中トップクラス……なのだが既視感が強い。どこかで見たような。嵐の前の静けさ。

すさまじき熱帯

俺は一攫千金のチャンスを求め、熱帯にやってきた。組を裏切った奴を殺したら一億。俺は聞いたこともない国へと出発する。

「これはひどい」
ついに暑さでやられたか!?とまず作者の頭の中を疑いたくなるような内容。
ぶっ飛びどころか崩壊している。見どころは現地の人々が話す言葉だ。
「垂乳根のお釜崩れる毛脛かもかな!」(201頁)
こんな言葉を考えていた時の精神状態が知りたい。それとも本当に意味のある言葉の当て字だろうか。

独白するユニバーサル横メルカトル

自我を持つ私こと「建設省国土地理院院長承認下、同院発行のユニバーサル横メルカトル図法による地形図延べ百九十七枚によって編纂された一介の市街地道路地図帖」が目撃したことと、その顛末を淡々と語る。自我を持つ地図帖が見ていたものとは――。

表題作。ホラー・ミステリーのバランスも良く一番まともな内容になっている。故に感想は少ない。
擬人化した地図たちの会話を楽しんでみるのはいかがだろうか?

怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男

強迫性障害を持つMC。彼は拷問を生業としていた。しかしある日、拷問を受けても恐怖を示さない女性が送られてくる――

良くも悪くも無難な短編(ここまで読んだせいで麻痺している可能性もあり)
冒頭のピザ以外はまともな感じである。拷問の描写はあるにはあるが、非常にライトな出来となっている。

オススメ度

オススメ度★☆☆☆☆
面白さ★★★★☆
合計★五つ
自らすすんでこの小説を誰かに薦めるだろうか?
しかしながら今までにない境地の開拓や、既成概念の破壊には持って来いである。
独白するユニバーサル横メルカトル (光文社文庫)

平山 夢明 光文社 2009-01-08
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