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本を買うときに自分の中で決めている基準はないだろうか?

私はそうなのだが、自分の基準に基づいて本を買っていくと、次第に同じような本が増えていく。その結果マンネリに陥ってしまう。

何か変わった本、それもうんと変わったものが読みたい。そんな人にオススメしたいのが今日紹介する「中二階」だ。きっとあなたの欲求を満たしてくれるに違いない。ではさっそく見てみよう。  

目次

  1. ニコルソン・ベイカーとは?
  2. 「中二階」を読む
  3. オススメ度

ニコルソン・ベイカーとは?

ニコルソン・ベイカーはニューヨーク(※1)生まれの60歳。白い髭が良く似合あう(※2)アメリカの小説家・ノンフィクション作家である。
着目すべきはその小説スタイルの斬新さ、ユニークさである。作品の多くは細かく、そして人物の意識の流れを追うものが多い。

(※1)ニューヨークと言われて一体何を思い浮かべるだろう?ちなみにアメリカ最大の都市であり、人口は800万を超える。市内総生産は東京に続く2位(※3)だそう。自由の女神などいろいろあるがやはり「NYチーズケーキ」だ。これは美味しい。もちろん本場で味わったことなどないが、大学生協には「NYチーズケーキパイ」なるものが売っており、これがまた安くて美味い。120円だったと記憶する。ちなみにNYにはさほど思い入れはない。
(※2)白い髭が良く似合うといえばやはりサンタクロースだろう。25日のクリスマスには世界中を駆けまわる(※4)。多くの子供たちから愛されているサンタクロースだがそういった話につきものの「悪い子には〇〇」という話が各国に伝わっている。黒いサンタクロースなどが有名だろうか。
(※3)東京に続く2位ということは1位が東京なのである。すごい!あの小さな面積の中でどれほどのマネーが動いているのか、私には想像もできない。
(※4)もちろん一人のサンタクロースが全部やっているわけではない。そんなことをしたらサンタは過労死してしまうだろうし、動物愛護団体からはサンタの元に苦情の電話や手紙がどっさり届くことになるだろう。サンタは世界中に存在している。日本にもサンタは一人いる(※5)
(※5)パラダイス山本さんである。公認サンタになるには数々の試験(※6)を突破し「グリーンランド公認サンタクロース教会」に認可される必要がある。7月に行われる「世界サンタクロース会議」には自宅からサンタクロースの衣装で参加することが義務付けられている。
(※6)サンタに試験なんていらないだろう? と思われた方もいるだろうがサンタクロースの仕事を思い出して欲しい。バリバリの体育会系である。なんてたって何本もの煙突を上り下りしなければならないのだから!試験は書類選考から始まり体力測定、長老との面接、身だしなみ・備品の審査、宣誓文の朗読(古文書を全てHoHoHoで朗読)。これらが終わり公認サンタ全員の承諾を得られると晴れて新生公認サンタとなる。

小説自体が12作とそれほど多くなく、日本では「中二階」「室温」「もしもし」「フェルマータ」「ノリーのおわらない物語」が翻訳されているにすぎない。しかしどれもが挑戦的でユニークな出来となっている。

「中二階」を読む

「中二階」はアメリカで刊行されると同時に、スタイルの斬新さ、ユニークさが評判を呼び、「88年代(※1)の最大の収穫」などの熱烈な賛辞を贈られた本だ。

(※1)日本で88年といえば昭和63年・皇紀2648年だ。当時の総理大臣は竹下登(※2)である。ティファニーの来日によるティファニー現象、ドラクエ3の発売、リクルート事件など様々なことがあった。新語・流行語は「ペレストロイカ」と「今宵はこれまでに(いたしとうございます)」。かなり凶悪な事件で誰もが知っている事件もこの年に発生している。
(※2)そのお孫さんがミュージシャンでタレント、俳優のDAIGOさんである。姉は漫画家の影木栄貴。

ストーリー自体はとてもシンプル。
昼休み直前、主人公の靴紐が切れてしまう。主人公は昼飯をとるついでに新しい靴紐を買い、用事を済ませ自分のオフィスがある中二階へと戻る。それだけなのだ。
しかも物語内の時間はほんの数秒である。
どういうことかというと、物語は用事を済ませた主人公が中二階へ戻るためのエスカレーター(※3)に乗ったところから始まり、中二階で下りて終わるのだ。

(※3)エスカレーター、怖くないですか?特に上野とか大井町のエスカレーター。上に行くにつれて足がガクガクしてきます。後ろなんかを振り返ったらそのまま気絶してしまいそう。

本当にそれだけで物語が成り立つのか?と思われた方もいるだろう。しかし安心して欲しい。見事に成り立ってしまっているのだ。190Pの中にうんと細かく様々なことが詰め込まれている。

何を書けばそんなことになるのか、そういう方は「イメージマップ」を思い出してみて欲しい。Aという単語を聞いて思い浮べた単語を書き、それについて思いついたものを書くという、脳内に浮かんだことを図示して目で確認できるようにする作業だ。そしてそれは「意識の流れ」にもつながることだ。

つまりこの小説は、エスカレーターに乗った主人公の飛躍する考え、空想、そして過去の出来事など普通の小説では時間を停滞させるだけだとして省いてしまうのものに着目して書かれている。しかもそれに脚注が付き、その脚注が時にはメインストーリーを放り出して何ページにも渡ってしまうのだから面白い(たとえばホチキスのデザインについての考えが細かい文字で1Pも続く!)

いわばエスカレーターに乗る主人公の見た景色を脳内に構築する主人公A、主人公Aが構築した景色を見て何かを考える主人公B、そして主人公Bが考えた事象についてさらに細かく掘り下げて考える主人公C、そんな感じだろうか。

しかしながら、こんな主人公の思考の渦の中に放りこまれた我々読者は肝心の「私」、つまり主人公のことについては何も知ることができないのである。主人公はどうやら意図的に自分のことを考えないようにしているようだ。それが意味するところ(※4)はなんだろう?

(※4)単純に考えれば自分が嫌いだから自分のことは考えないようにしていたらいつの間にかそんな癖が付いていた、ということになりそう。しかしそんなものではなくて、個性個性と主張しながら没個性に陥ってしまっている現代人についての皮肉なのではないだろうか?そもそも個性とはなんだろうか。他人と違えば叩かれ、同じであれば個性がないと叩かれる。そんな生きにくい世の中である。

何にせよ、この小説はただ変わっただけの小説ではないということだ。

オススメ度

オススメ度★★★★★
面白さ★★★☆☆
すばらしい本であることには違いないがいかんせん読むことに疲れる。しかしこの本に関しては内容もさることながら、カバーも素晴らしい。この主人公の物憂げな顔を見て欲しい。なんともチャーミングである。
中二階 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

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