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今現在、自分の家、もしくは自分の部屋に何冊の辞典があるだろう。 まだ捨てていないという人はおそらく三冊、国語辞典・英和辞典・古語辞典ではないだろうか? 

そもそも現在ではネットで調べればすぐ単語の意味は出てくる。持ち運ぶんだったら電子辞書。そもそもアプリが入っている、そんな感じではないだろうか。

しかしながら本書には他の形態の辞典を貶めることなく、紙辞書について熱く語られている。我々の今後の人生を一変させるかもしれない、そんな本書を今日は見てみようと思う。
※私は本書を読んですぐ書店へ向かった。まさに目から鱗の本である。こんな本を書いてくれて本当にサンキュー!と言いたい。


目次

  1. サンキュータツオとはいったい誰なのか?
  2. 「国語辞典の遊び方」を読む
  3. 実際に遊んでみた
  4. オススメ度

サンキュータツオとはいったい誰なのか?

この読むからに怪しげな人物「サンキュータツオ」とはいったい誰なのだろうか。

これが現在のネット社会のありがたいところである。ググれば簡単に出てくるのだ。簡単にまとめさせていただくと、オフィス北野所属の芸人さんである。ピンではなくコンビを組んでおりコンビ名は「米粒写経」芸人として活動する一方で一橋大学の非常勤講師も務めているという人物である。

趣味が高じて本を出した、というよりも学者が趣味で芸人やってるの方がしっくりくる。

ちなみにもう一つの著書「へんな論文」も読んでみたがそちらも大変面白かった。そしてせっかくなので漫才を調べて見てみたが非常に面白い。特に歴史好きにはたまらないはずである。こちらもぜひ見て欲しい。

「国語辞典の遊び方」を読む

では実際に読んでみよう。
本書は一章と二章に分かれており、一章では辞典の成り立ちから多様化にいたるまでの説明を突っ込みや解説つきで面白おかしく説明している。特にそれぞれの辞典の違いについて語られているところは非常に面白い。

私自身、辞典なんてどれも同じことが載っているだろうと思っていた口なので(よくよく考えてみると、それならば各出版社が競うように辞典を出す意味がないではないか)各辞典の特色、掲載語の選定法、または編者による個性など楽しく読むことができた。

辞典についての本ということで固めな文章が続くのだろうか? という人は安心してほしい。そこはさすが芸人である。飽きさせず、それでいてわかりやすく解説してくれている。

さらに二章では著者自らが選んだ辞典を男性キャラクターに例えて解説してくれている。(おそらくこれは著者がBL好きであることも関係しているのだろう)たとえがとても的確である。こういう風に解説してくれると、普段身近に感じない辞典との距離がグッと縮まるような気がするのは私だけだろうか?

実際に遊んでみた

そんなわけでこの本を読み終わった私は早速書店へ走った。無論辞典を買うためである。DSC_0104
そして「新明解国語辞典 第七版」「ベネッセ表現読解国語辞典」「明鏡国語辞典 第二版」をゲットした次第である。

せっかくなのでこれを使って読み比べをしてみたい。以下すべて上記三つの辞典それぞれからの引用となる。

本書内では「恋愛」について触れられているので、ここは「恋愛」を分解してまずは比べてみようと思う。
≪恋≫
「新明解」……『特定の異性に深い愛情をいだき、その存在が身近に感じられるときは、他のすべてを犠牲にしても惜しくないほどの満足感・充足感に酔って心が高揚する一方、破局を恐れての不安と焦燥に駆られる心的状態』
「明鏡」……『特定の異性(まれに同性)を強く慕うこと。切なくなるほど好きになること。また、その気持ち』
「表現読解」……『男女の間で、相手に強く引かれ、慕う気持ち』

並べてみると改めて思うが、かなり差異がある。「新明解」はかなり主観が入っているようで、読んでいて面白い。「明鏡」は現在の社会の状況に合わせてきたのだろう、他の二冊が男女間と限定しているのに対し、同性でもあり得るというところに編者の考えが見えるようだ。「表現読解」は解説こそあっさりだが、「恋する」という思いの強さに応じてより適当な表現を提示してくれている。

≪愛≫
「新明解」……『個人の立場や利害にとらわれず、広く身のまわりのものすべての存在価値を認め、最大限に尊重してきたいと願う、人間に本来備わっているととらえられる心情』
「明鏡」……『価値あるものを大切にしたいと思う、人間本来の温かい心』
「表現読解」……『相手のために尽くしたいと思う、温かい気持ち』

「新明解」は範囲が非常に広い。範囲としては新明解>明鏡>表現読解だろうか。しかしどれも人間に本来備わっている(備わっていてほしい)温かい心情である、という意味で共通している。

こうして見てみると、同じ語なのに説明の仕方によって読み手が受ける印象が大きく異なる。だからといってどの日本語が正しい、どの辞典が間違いということは無いのである。私も「絶対的に正しい日本語」というものは存在しないと考えている。「ら抜き言葉」も「ヤバイ」も定着してしまえば「正しい日本語」となる。そもそも「これは間違いでこれが正しい」ということが連綿と続いてきたならば、古語や死語なんて存在しないはずだろう。そもそも明治初期の小説を読んでも今ではわからない、使わない言葉が多い。150年ちょっとで大きく日本語は変わってきているということだろう。なのであれやこれやとやかく言うのではなく、日本語の成長を温かく見守るのが良いのではないだろうか。

オススメ度

オススメ度★★★★☆
面白さ★★★★☆
合計★8つ
とにかく手に取って実際に読んでみて欲しい。そして自分のお気に入りの辞典をぜひ購入してほしい。その際には「オススメ辞書占い」を活用すると、きっといい出会いに恵まれるだろう。ぜひこの本も、そして「米粒写経」としての二人も売れて欲しい。
学校では教えてくれない! 国語辞典の遊び方 (角川文庫)

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