この本読んどく?

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タグ:イヤミス

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御嬢様学校というものは今も昔も羨望の的なのだろうか?

実際の御嬢様学校の実態などはまったく私はわからないが、少なくともこの「暗黒女子」の世界においては生半可な覚悟では生き残れない苛酷な世界のようである。

今日は現在映画公開中でもある「暗黒女子」を見てみようと思う。




目次

  1. 秋吉理香子ってどんな人?
  2. 「暗黒女子」を読む
  3. ネタバレ感想
  4. オススメ度

秋吉理香子ってどんな人?

秋吉理香子氏は2008年「雪の花」でYahoo!Japan文学賞を受賞。2009年に雪の花を含む短編集でデビューした作家だ。他にも「聖母」「自殺予定日」「サイレンス」などの小説が現在刊行されている。

「暗黒女子」を読む

まず読んでみて思ったのは、作者は短編形式のほうが得意なのだろか? ということだ。
他の小説を読んでいないのでなんともいえないが、デビュー作も短編集のようだし、二作目にあたる本作「暗黒女子」も短編集のような形式だ。短編集は昔から売れない売れないと言われ続けているだけに、二作目はなんとか長編に持って行こうとした結果の構成だったのではないかと思われる。

そしてその短編集形式の構成が上手く機能しているのがこの「暗黒女子」だ。
小説内の人物も語っているように、学校内では主導権争いによる駆け引きが日々行われている。「誰かを貶め踏み台にし自分が上に行く」という学内生活の縮図を短編集にすることで巧く表現しているように思える。

作者が女性だけあって、現実世界の女子会もこんなことが頻繁に行われているのではないか?と疑ってしまう。表面上は仲良く見せても腹の探りあい。誰がどんな男と付き合っているか。どんなブランドを身に着けているか。どんな店をしっているか。服装は。等々どうにかして誰かの上に立ちたい、主導権を握りたいという裏の目的があるのではないだろうか。

「暗黒女子」は現在映画公開中である。
映画公開は知っていたがキャストを見て驚いた。主演に一時世間を賑わせた清水富美加の名があるではないか。また平愛梨の妹である平祐奈も名を連ねている。映画のほうは無事公開もされBD販売も決定しているそうだ。
さらに映画公式HPの「裏予告」が大変怖い。鳥肌が立った。こちらも一度見てみることをお勧めする次第である。

ネタバレ感想

面白いのだが、ミステリーとして見るとやはり弱いのかなと思ってしまう。
おそらくミステリーを読み慣れた読者は「目次」を見た時点でおおよそのストーリーと流れ、犯人と結末が分かってしまったのではないだろうか。自作小説でお互いに非難し合い、堂々巡りになるが実際手を下したのは一番の親友で、自分が主役に成りたかったからというパターンである。

そんなことを考えつつ読み進めると、案の定そのままの流れとなってしまう。
しかし三人目の自作小説内で担当顧問である「北条」の存在が明らかになると、「主役に成りたかった説」が少し揺らぐ。というのもこの女子が主役の小説で男性が出てきているということは、どう考えても登場人物の中のだれかと出来ているに違いないからである。犯人は間違いなく小百合であることを考えると、実は北条と小百合が出来ていたが、それを知りつつ応援しつつも裏で北条といつみが出来ているという、寝盗られ動機なのかなとも考えてしまう。

しかし実際は単純なように見えて深いものだ。
「互いに告発し合う輪」の中に入っていなかった小百合はどう考えても怪しい存在だなとこの頃になれば皆気がつくだろう。そして動機は結局のところ「自分が主役になるため」というものだった。
 
しかし、ここからが難しい。果して本当にいつみは死んでいるのだろうか?

まず小百合がいつみを殺す必要があったのだろうか? と疑問が持ち上がる。
普段からいつみの側にいて、いつみの秘密にも協力しており完全に感化されている小百合である。とするならば、殺すのではなくいつみと同じように相手の弱味を握りコントロールするのではないだろうか。小百合はいつみどころか澄川家に対しての弱味を握っているようなものだ。何も主役を交代するために殺す必要があったのだろうか。

この説をとると、結局のところいつみは生きており、いつみと小百合の復讐劇となる。メンバー達には恐怖を味わわせ、いつみに新たな生活を守るために自分が殺したことにし、それを仲間たちと分かち合い自分が犠牲になるというものだ。素晴らしい友情ですね。

しかしながらこの説では小百合だけ白いままでフェアではない。
とするとやはり「カニバ」に戻ることになる。この場合、伏線や環境設定がしっかり結末と絡んでいるので恐らくはこちらが正しい(様々な疑問点は残るが。例えば解体したとして、メンバーはその臭いに気づかないものなのか?という問題。闇鍋では嗅覚も敏感にとあるのだし、気づいてもおかしくはない)のだろうと思う。というのも、キリスト教系のお嬢様学校という陳腐な設定が生きてくるのだ。

小百合がいつみを殺したのも過度の信仰心故と考えれば納得できる。今まで崇拝していた偶像を突然失ったら急に反教徒になる現象を考えれば自然なことだろうと思えるのだ。また、最後のカニバの場面でもキリストの身体を分け与えるという例を持ち出し上手くキリスト教に繋げている。やはりこちらの方がしっくりくる。

しかし、小百合の今後はどうなるだろうか。
自分自身の罪を仲間と共有し、しかも仲間達の弱味を握る脅迫者の立場にたった小百合。いつみよりも物事の計画を立てるのが上手く、いつみの側で様々なことを学んだであろう小百合。「怪物」と表現するのがふさわしいようだ。しかしながら、御約束通り、脅迫者は殺されるし怪物は退治される運命にある。主役交代の日は意外と近いかもしれない。

オススメ度

オススメ度★★★☆☆
面白さ★★★☆☆
終わりよければすべて良しの好例だろう。ミステリー初心者にもイヤミス初心者にもお勧めだ。
暗黒女子

秋吉 理香子 双葉社 2013-06-19
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4月14日からTBSにて連続ドラマ化された「リバース」

放送元のTBS系列ではすでに「夜行観覧者」「Nのために」「往復書簡」がドラマ化されている。制作陣も変わっていないようすだ。これだけドラマ化されるのはおそらく視聴率がとれるのだろう。

今日はドラマ原作本「リバース」を見てみようと思う。ドラマは原作とは違った内容のようだが、どちらが好みか比べてみて欲しい。

目次

  1. 「湊かなえ」ってどんな人?
  2. ミステリージャンル「イヤミス」とは?
  3. 実際読んでみて~ネタバレ無し~
  4. 実際読んでみて~ネタバレ有り~
  5. オススメ度

「湊かなえ」ってどんな人?

読書好きで「湊かなえ」を知らないという人はほとんどいないであろう。
今や「イヤミスの女王」とまで言われる湊氏。「聖職者」で第29回小説推理新人賞を受賞。そして聖職者から続く連作集「告白」が2009年に「第6回本屋大賞」を受賞。翌年には松たか子主演で映画化(「どっかーん」というインパクトの強いセリフを未だ憶えている人もいるのではないだろうか?)書籍も300万部を超える大ヒットとなり、一気に人気作家へとのぼりつめた。
湊かなえ=イヤミスという図式とともに、「イヤミス」というジャンルを世に広めた人物でもある。

しかもメディア化されたのは告白だけではない
映画は告白(2010年)に始まり、北のカナリアたち(2012年) 白雪姫殺人事件(2014年) 少女(2016年)など実に四作品

ドラマ化は境遇(2011年) 贖罪(2012年) 高校入試(2012年) 花の鎖(2013年) 夜行観覧者(2013年)  Nのために(2014年) 望郷(2016年) 山女日記(2016年)

など見てわかる通りデビュー以降毎年ドラマ化、もしくは映画化されている。現在刊行されている書籍の半分以上が何らかの形でメディア化されていることになり、そのことからも湊作品の根強い人気と数字の取れ高が安定していることが読み取れる。

ただけっこうぶっちゃけて言ってしまう人のようで「山本周五郎賞」受賞後のエッセイで同賞と芥川賞を痛烈に批判している。その気持はわからなくもないが。

ミステリージャンル「イヤミス」とは?

その湊かなえが広めたと言えるジャンル「イヤミス」とはいったいどんなジャンルなのだろうか?
実際、読んで字の如しなのだが「読んだ後、嫌な気持ちになる小説」を指すことが多い。

現在では湊かなえ・真梨幸子・沼田まほかるの三人を「イヤミスの三女帝」なんて呼ぶ人もいるようだ。
そんな代表作は湊かなえ「告白」、真梨幸子「殺人鬼フジコの衝動」、沼田まほかる「ユリゴコロ」などが特に有名なようである。

海外なんかだとジャック・ケッチャムの「隣りの家の少女」などが有名だ。これは結構「くる」ので元気がないときに読むことはお勧めしない。

実際読んでみて~ネタバレ無し~

TBSで放送が始まった「リバース」であるが物語も中盤までさしかかっているようだ。
ただ数字は振るわない様子。原作とは違う内容のようだが、それがどう影響しているのか、落ち所をどこに持ってくるのか、とても気にはなっている。

さて小説の「リバース」である。
本書はいままでの湊作品とは少し違っている。今までの湊作品群は総じて主人公が女性であり、女性側からの視点が巧く描けていること、それとイヤミスがからみ合うことで女性からの支持を多く得てきたに違いない。

だが今作「リバース」は主人公が男性なのだ。この男性主人公は湊氏初の試みであり、作者の並々ならぬ意欲が見てとれる。

それともう一つ。湊氏の作品を読むのは「境遇」以来となったが、この「リバース」は湊氏の小説にしては珍しく、ミステリーと聞いて思い浮かべるミステリーに近い仕上がりになっているのだ。
言ってしまえば「犯人探し+意外な結末」のために入念に設計された長編ミステリーだ。普段の湊かなえ作品に慣れている湊ファンはおそらく「新鮮さ」を感じられただろう。
逆に普段は湊作品を敬遠している人からすれば、「こんな小説も書けたのか!」となり、やはり新鮮さを感じるに違いない。

では我々が期待する「イヤミス」の要素はないのだろうか?
それは安心して欲しい。しっかり存在している(今回は男性目線ではあるが)

実際読んでみて~ネタバレ有り~

ここからは少しネタバレありで書いてみようと思う。
解説にあるようにこの「リバース」という小説は「結末ありき」の小説であった。講談社編集部から「お題」が出されたのだ。そのお題にのっとる形で本書は執筆された。このネタバレ部分を見ているということは皆さん読後だということでお分かりだろうが、そのお題はこの小説の最後の結末を既定していると言ってよい。その結末へと導くために設計し、かつ自分の色もしっかりだしているこの「リバース」は傑作といえるだろう。

そのイヤミス要素も男性目線初挑戦とは思えないほどよく描かれている。
女性もそうでありように、男性にもリア充・非リア充のグループがあり、そしてその二つのグループの中でまた自分の立ち位置があったわけで(非リア充に近いリア充の下位グループとかキョロ充とか)学生時代の学級ヒエラルキーや微妙な友人関係、つかめぬ距離感や自身の立ち位置、挙げ句の果てには「あれ、こいつと俺って本当に友人関係なんだっけ? でも相手はそう思っていないんじゃ……」という思春期特有のあの苦しい記憶を見事に甦らせてくれる。そして読んだ後には溜息をつき、あるいはへこみ、総じてイヤな気分になるのである。

さらに湊作品の多くは登場人物たちのその後が心配になるケースが多い。
本書もその一つで、最終的に深瀬は自分がしたことに気がついてしまう。いくら気がつかなかった・知らなかったと言ってもおそらく「過失致傷罪」が適用されるだろう。さらに深瀬はどちらをとるかの選択に迫られることになる。

①自身がやったことを正直に美穂子に話すのか? しかしこの場合、おそらく美穂子との関係は修復できないものになるだろうし、さらに罪を問われる可能性もある。だが、深瀬は美穂子の告白も聞いている。それを以て反撃材料とすることに出来るかも知れないが、そんなことは誰も望んでいないはず。(続編があればこんなドロドロしたのを書きそうではあるが。法廷物も新しい試みですね!笑)

②自分が気づいたことは自分の中に封印する。しかしこの場合は深瀬の今後の人格に多大な影響を及ぼす可能性がある。さらに直近の危険は深瀬が「広沢の両親に本当のことを話そう」と美穂子に話していることだ。行かなければ行かないで怪しまれるだろう。しかし行ったとしてどのように話すのか? 私は深瀬が上手くごまかすような場面は想像できない。

こうしてみると、湊かなえは深瀬の退路を完全に塞いでいることがわかる。まさに前門の虎、後門の狼といったところか。

私はいつか深瀬が話すときが来るだろうと思う。しかしそれは良心の呵責に耐えられないからという理由だろう。自分のために話す。話して楽になる。そんな未来が見えるのは私だけだろうか?

オススメ度

オススメ度★★★☆☆
面白さ★★★★☆
合計★七つ
湊作品としては珍しく、ミステリー色の強い小説。未読のかたはぜひ読んでみて欲しい。
リバース (講談社文庫)

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