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お札が空から降ってくるというと、お蔭参りに関連する「おふだふり」「ええじゃないか騒動」が思い浮かぶ。

そしてここ、神奈川県戸塚区の八坂神社でも毎年7月14日に「お札まき」が催される。
この神社周辺には屋台も立ち並び、なかなか進めないほどの人出であった。
このお祭りの特徴は「お札をまく人」にある。どんな人がまくのだろうか?

私は同日開催の「水止舞」が15時に終わると、急いで戸塚へと向かった。




目次

  1. 八坂神社と牛頭天王~悪霊退散と疫病除け~
  2. 壮絶なバトル!霊験あらたかな「お札」を奪い合う!
  3. そして男の娘たちと一行は町中へ…!

八坂神社と牛頭天王~悪霊退散と疫病除け~

祇園社(現八坂神社)の祭神である牛頭天王。
様々な側面をもつ牛頭天王だが素戔嗚と習合したり、武塔神や天道神と同一視されたりとなにやら忙しい。また御霊信仰とも結びつき、崇め鎮めることで負のパワーを正へと転換しようとしていたようだ。

また疫病神であることからポスターが一躍人気となった「蘇民祭」の蘇民将来説話とも混ざり合い様々な話のバリエーションが作られているようである。

この蘇民将来説話はざっくり言うと「茅の輪をつけた蘇民将来の娘以外を武塔神(素戔嗚)が皆殺しにする」という話なのだ。ここから茅の輪もしくは自分が蘇民将来の子孫であるとわかるものを門口に置いておく貼っておくと、疫病から逃れられると信じられるようになった。

そして今回のお祭り「お札まき」も獲得したお札を玄関に貼っておくと、健康に過ごせると言われている。

壮絶なバトル!霊験あらたかな「お札」を奪い合う!

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かつては多くの場所で見られたお札まきも、今ではこの戸塚でしか行われていないようである。
「悪霊除け・病気除け」として信仰され、かつ疫病が猛威を奮っていた時代に隆盛を見せているので単純に医学の進歩により寺社神仏に祈願するまでもなくなったという考えもできそうだが、どうやら違うようである。この書き方だと明治以前の江戸後期には衰退してしまっているようだ。

衰退した原因はなんだろう?
単純に幕府が禁止した、と考えることもできる。だがしっくりこない。
流れ的に「純粋な女性のお札まき」があってそれが歌舞伎と同様に幕府に禁止され、元禄期から「女装をしたお札まき」が始まり広まった、という方がしっくりくる。とすると、衰退の原因は自然消滅になりそうである。「疫病の流行」により「お札まきのブーム」が一度おこり、疫病の収束とともに消滅していったのではないだろうか。そして疫病が流行る度に行っていたが次第に慣れや他のものに人気を奪われ根付いたのが戸塚だったのではないだろうか。答えを導く鍵は唯一女装をしていない男性が持っている「幣」、そしてそれに付いている「翁面」だろうか。ちなみに「コロリ」ときくと反射的に「コレラ」と想像してしまいがちだが、元禄期には日本に「コレラ」は入ってきていない。

さて肝心のお祭りはというと、境内に円が引かれ始めた。
そしてそれを境界とするように、観客たちが集まりはじまるではないか。私もそこに待機していると、ぼてかずらを被ったリーダー役の男の娘が登場!
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そして続々と姐さんかぶりをした男の娘たちが入場!
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\キャーカワイイ!/\コッチミテ!/
何やらすごい雰囲気である。彼らが入ってきて場の雰囲気が変わった。皆戦闘態勢である。
真ん中で音頭をとるリーダーの囃子歌に続き、周囲を踊りながらまわる方たちも山彦のように歌を歌う。
さあ来い子供(さあ来い子供)
天王様は(天王様は)
囃子がお好き(囃子がお好き)
という調子で囃子歌が続くのだが「わいわい囃せ天王山に登って」という歌詞までしかメモれず。
ただまく直前に「まくぞ」とか「まこか」とか言ってくれるんですよね。
なので「まく」という言葉が出た瞬間に人の輪が縮まり男の娘たちに接近!しかし中にはフェイントもあったりしていつ撒くのかとドキドキしてきます。「まだまかん」とか「まだ早い」とか。

しかしついにその時が!リーダーが「それまくまくぞ!」と言うと周りで踊っていた人たちも周囲にあつまり団扇で仰ぐ体制に。そして観客たちもワァーッと中心に押し寄せる。
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この円の中心はかなりもみくちゃにされて痛かろうことが想像される。しかし円の中心の人たちをよく見ると空中に舞ったお札じゃなくてリーダーの人が手に持っているものをむしり取ろうとしているではないか!だがリーダーも長年やっているだけあってあしらい方は慣れているようだ。無事にお札は宙を舞う。しかもこの日は風が強く中心からは離れた場所へとひらひら、ひらひら。

私はこれを見越して葉っぱで風向きを確認し、来るであろう場所で待機していたのである。
と、どうだろう。はたしてこちらへ飛んでくるではないか!ラッキーと手を伸ばすもその風圧でお札はヒラリと身をかわす。そしてお札は少女の手の中へ。天王様は子どもがお好きなのだ。あぁ無念。

しかし摑めなかったという人も安心して欲しい。お参りの際に一枚必ず貰えるのだ!
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それがこちら。これで今年は健康に過ごせるはず!五色あるのでぜひコンプリートを目指してみてはいかがだろうか?

そして男の娘たちと一行は町中へ…!

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神社をおりて、警察の誘導のもと町中でお札をまいて歩きます。
この道の隣りは道路で車も普通に走っているので結構危ない。特にこの日は風が強かったので何枚かは道路に飛んでいってしまいました。
参加してわかったが、お札獲得の倍率はかなり高い。というのも一人何枚まで、と決まっているわけではないからである。取れたら本当に幸運である。
ちなみに強さはちびっこ>おばちゃん>その他である。
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