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国会が閉会した。マスコミの報道を含めここまで腐っていたのはなかなかお目にかかれない。ニュースを通じて我々に伝えられる報道と言えば「加計学園」や「森友学園」の報道ばかりだ。しかもそこに汚職が絡んでいるのならまだしも、あたかも違法性があったかのように報道するメディアには首を傾げる。「共謀罪」に関してもそうだ。国会の前で反対していた人たちは民主党政権も同じ法案を成立させようとしていたことを知っているのだろうか? 「テロ等準備罪」という名の法案がいつの間にか「共謀罪」として広まっているのは何故だろう? フィリピンが現在ISと戦闘状態になっており、死者も300人以上出ていることをほとんど報道しないのはなぜだろう?

今回はすべての政治体制を痛烈に批判し、それを寓話的に記した名著「動物農場」を見てみることにする。




目次

  1. ジョージ・オーウェルとディストピア小説
  2. 「動物農場」を読む
  3. オススメ度

ジョージ・オーウェルとディストピア小説

ジョージ・オーウェルはイギリス植民地時代のインドで生まれた作家・ジャーナリストだ。
代表作は「1984年」や本書「動物農場」があげられることが多いが、ルポ的作品も多く執筆しており、「ビルマの日々」や「カタロニア賛歌」も優れた評価を得ている。

だがやはり「1984年」があまりにも強烈なためディストピア小説と切っても切れない縁であると思われる。
ディストピアとはユートピアの正反対の社会、主にSF小説で描かれることが多い。そして多くは政治的・社会的に問題点を抱えている。一見平等・平和的な社会に見えるが、その実権力者や国家による監視・管理が行われており、自由も見せかけだけのものであったり、洗脳、焚書、発禁、愚民政策など一部の者が有利にないような支配体制を敷いていることが多い。

特に洗脳に関しては外から見る分には「こいつ洗脳されてる」とわかる。つまり本を読む我々は本の中で洗脳されている人物を指摘できるが、これを現実社会に置き換えてみるとどうだろう。「お前は洗脳されている!目を覚ませ!」と言われて「はい、そうですか」と納得する人間はいるだろうか?

このように多くの事を考えさせてくれるのが「ディストピア」小説だ。

「動物農場」を読む

ところでトランプ大統領が誕生してから半年が経過しようとしている。
アメリカでは新しい大統領が誕生したらその時代、その大統領を反映したかのようなベストセラーが生まれるらしい。歴代大統領はそろって読書家であったそうで(ルーズベルト大統領は自分が考えたプロットの小説をヴァン・ダインなどに頼んで分担執筆してもらっている)、その大統領が読む本は必ずといっていいほどベストセラーになるそうだ。ちなみにオバマ氏が大統領になった際は「マイ・ドリーム」や「リンカーン」がベストセラーになったらしい。

だが、トランプ氏は本をほとんど読まないそうだ。
ではどんな本がベストセラーになったか? そう。御察しの通り「ディストピアもの」がベストセラーになったのだ。特に「1984年」や「侍女の物語」が売れているようである。(自分たちが選んでおいてディストピアがベストセラーになるというのも考えてみればオカシナ話ではある)

さてこの「動物農場」も所謂ディストピアものだ。
話の筋は簡単で、「農場主の人間を動物たちが追い出して、動物の動物による動物のための『動物農場』を作ろうではないか!」という話である。ここに登場する動物たちはそれぞれをそのまま動物としての登場人物として見ても面白く読めるのだが、それぞれやはり人間をモチーフにしている。

またこの話の中で権力を握っていくのは「豚」である。豚好きの方がいたら申し訳ないのだが、「あなたは豚のようだ」と言われて感激する人は少ないだろう。少なくとも日本では豚は醜いイメージを持たれているに違いない。その醜い豚を権力者に据えたところにも極めて痛烈な批判・皮肉が読み取れる。

すぐれたSFというものはすぐれた預言書たりえる、という言葉をどこかで耳にしたことがある。これには根拠があり、社会や政治をメインに据えたSFを書く場合、どうしても下調べの重要度が増すのである。特に何十年・何百年先の世界を描こうとする場合は現実世界とさほど変わっていない可能性が高い。なのであまりに変わった未来では現実味が薄れてしまうのである。作者はそうした下調べの中で知識を得て、いまの世界の問題点は何なのか、政治体制はどうなのかと考察しながら書くことで、何年か経ったら本当のことになっていた、なんてことが起きるらしい。

いつの時代に読んでも色褪せない名作というのは素晴らしいことだ。が、それは裏を返せば当時作者がこのディストピア小説で問題にしたことが実際に発生し、それが長い年月を経ても解決されていないことを指すのではないだろうか。問題は依然としてそのままにして、臭いものには蓋。人間や社会はその外見だけを変貌させ中身は全く変わっていないのではないだろうか。

またこの本の序文案にある『多くの雄弁なイギリスの平和主義者たちが、ロシアの軍事主義に対する崇拝の広がりに対してまったく声を上げていない』といった文や、『どうやらロシア人には自衛の権利があるけれど、私たちが自衛するのは万死に値するらしい』といった文に注目したい。これはまさに今の日本で起きていることと全く同じではないだろうか? 今、イギリスがどんな考えを持っているのかは全く知らない。しかし少なくともこの本が執筆された1945年当時と今の日本は同程度のレベルでしかないということではないだろうか?

オススメ度

オススメ度★★★★★
面白さ★★★☆☆
多くの動物たちが登場する本書。あなたの立ち位置はどの動物に当てはまるだろうか?
動物農場〔新訳版〕 (ハヤカワepi文庫)

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