この本読んどく?

オススメの小説や書籍、簡単料理のアレンジレシピまで幅広く紹介!

2017年05月

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昨今の戦国熱はとどまるところをしらない。一昔前まではマイナーだった武将も今ではゲームや大河の影響で一躍人気者となっている。

しかしながら有名な武将の影に隠れ、自身の手柄が他の武将のもののように語られていたり、存在さえ知られていない武将もまた多くいるのも事実だ。

今日は真田信繁に知名度も人気も押されがちな大坂の陣の功労者、毛利勝永を主人公とした小説を読んでみようと思う。

目次

  1. 作者の仁木英之ってどんな人?
  2. 毛利勝永とは?
  3. 「真田を云て、毛利を云わず」を読む
  4. オススメ度

作者の仁木英之ってどんな人?

仁木英之氏は2006年に「夕陽の梨」で第12回学研歴史群像大賞最優秀賞を受賞、さらに同年8月に「僕僕先生」で第18回日本ファンタジーノベル大賞大賞を受賞し、デビューした作家だ。

デビュー作であり代表作でもある「僕僕先生」はシリーズ化されており、これまでに9冊刊行されている。ちなみにこちらは太平広記をアレンジしたファンタジー小説となっている。

毛利勝永とは?

惜しまれつつも幕を閉じた真田丸から半年が過ぎようとしている。
その真田丸の中で毛利勝永を演じたのは岡本健一さんだった。が、牢人衆ということと信繁が目立ち過ぎ(主役だから当然)ということもあってやはり存在感が薄かった気がしてならない。

実際の勝永はどうだったか?
勝永は父吉成と同じく豊臣家臣として仕えた。関ヶ原では安国寺恵瓊の指揮下におかれたこともあり思うような活躍はできなかった。

その後領地没収となり一時土佐山内家へと身を寄せる。そんな中豊臣秀頼から招きを受け、土佐からの脱出を図る。ちなみに脱出の際、衆道関係であった山内忠義との関係を留守居役の山内康豊に暴露。混乱する康豊に「忠義が大坂に出陣したのだから私が助けに行くのは当然だ!だから大阪(包囲側=徳川方)に向かわせてくれ!」と頼んだようである。しかしながら皆さん御存じの通り勝永が向かったのは豊臣方である。これには忠義も激怒したそうで次男鶴千代・妻・娘は城内に軟禁されたらしい。
とっても簡単に、しかも誤解を招く可能性を覚悟の上で現代風に分かりやすく説明すると「彼女の父親に彼女との結婚届を見せ(しかも判も押してある)、彼女の元へ駆けつけると嘘を言い浮気相手の元へと駆けつける」ようなものである。これは忠義が怒るのも最もである。しかも領地没収後1千石もらって手厚く遇されていたというのに。ただ豊臣から受けた恩のほうが大きいということだろうけども、もっと他の脱出方法は無かったものかと気にはなる。

さて大坂の陣である。
豊臣譜代家臣ということで諸将の信望を得て「大坂城の五人衆」と称された。だが冬の陣では活躍できなかったようである。
だが、夏の陣である。夏の陣では道明寺で敗退した後藤基次の敗残兵を収容し大坂城へと撤退。天王寺口の戦いでは兵4000を率いて四天王寺南門前に布陣。本多忠朝から攻撃を受けると、これに反撃。忠朝・小笠原秀政・忠脩親子を討ち取ると、浅野長重・秋田実季(木像の話が有名な人)・榊原康勝・安藤直次・六郷政乗・仙石忠政・諏訪忠恒・松下重綱・酒井家次・本多忠純などの部隊を撃破。遂には家康本陣に突入するという活躍を見せた。しかし真田隊が壊滅すると戦線が崩壊。四方から攻撃を受けるも討ち取られる事無く城内へ撤退。秀頼の介錯を行った後、自身も自害したとされている。

ドラマでは荒々しい人のように描かれていたが、勝永は旧臣・浪人分け隔てなく、組下の者にもやさしい人物であったそうだ。

「真田を云て、毛利を云わず」を読む

この「真田を云て、毛利を云わず」は星海社から2013年に出たあと、おそらく大河にあわせてきたのだろうと思われるが、2016年6月に講談社から文庫化されている。その際元のタイトルを副題とし、タイトルを「真田を云て、毛利を云わず」に変更した。

さて戦国物である。昨今の戦国ブームを鑑みれば誰しも好きな武将一人や二人はいるであろう。私も戦国時代は好きだが、それは史実と史実の間の不明な点があるからである。解明されていない謎や不明瞭な部分に魅力があるのだ。なので、小説内でも多少の疑問はスルーできるのだが、行き過ぎるとやはり気になってくる。史実物であるならば、自身の妄想や想像は最小限に抑え、別のところで魅力を出すべきであろう。この小説はその悪い部分が出てしまっている気がするのだ。

この本を読んで気になったのは参考資料をどこから引張ってきたのか?である。単に私が無知なだけならば参考資料を読んで知識を深めたいという理由もある。が、やはり納得できない。
①当時の日本に甲冑を貫通し尚且つ拳大の大きさの穴が開くような火縄があったのかどうか?
→戦闘シーンを華やかという理由ならばもっと別の方法があったのではないか?

②竜造寺隆信の渾名の問題。
→どう考えても「肥後の虎」はおかしい。あえて「肥前の熊」を使わなかったのはなぜか?

③仙石秀久の問題
→長宗我部ファンや十河ファンに蛇蝎のごとく嫌われているのはわかる。が、あまりにも下げ過ぎるのはNGだろう。作者個人の心証が入ってやしないか。仙石がクズすぎるので全部責任を押しつけた感じの書き方は好きになれない。さらに、あいつは潮の事、船の事、何もわかっていないという場面があるが本当にそうだろうか?淡路島の大名が船や潮のことを全く知らないということはありえるだろうか。しかも淡路受領後は淡路水軍・小西行長・石井与次兵衛・梶原弥助ら複数の水軍を統括している。仮に何も出来ないただの暗愚を重要な場所に秀吉が置くだろうか。

④島津家久混同問題
→どうも読んでいると島津家久を作者が混同しているように思える。何も前情報なしに読むと上巻の「家久」と下巻の「家久」が同じ人物に思えてならない。どこかに注意書きがあってもいいものだがそれもない。それは作者自身が二人の「島津家久」を混同していたからではないだろうか。この時代の島津家には近い年代に二人の「家久」がいるのである。
一人は「島津四兄弟」の一人で軍法戦術妙を得たりと言われた「島津家久」。もう一人は島津義弘の子で初代薩摩藩主である「島津忠恒」改め「島津家久」。しかしこちらが「家久」と名乗ったのは関ヶ原後であり、かつ四兄弟の方の家久は1587年に没していることからもズレが生じている。

等々、所々気になるところはあるのだが、気にせず読めればそれなりに面白い本である。おそらく作者は西軍派なので、西軍ファンの方は概ね好意的に読めるだろう。
ちなみに「真田日本一の兵」と言ったのは先ほど出てきた「島津忠恒」である。が、この人は大坂の陣には行っていない。

オススメ度

オススメ度★★☆☆☆
面白さ★★☆☆☆
やはり所々腑に落ちない点があったのが悔やまれる。しかし一般的には知られていない武将の活躍する小説が増えることで知名度が上がるのは良いことだ。ちなみに毛利勝永だが、天下創生から変化がなかった顔グラがここに来てイケメンに変化している。能力値も大幅アップである。大河効果だろうか。
真田を云て、毛利を云わず(上) 大坂将星伝 (講談社文庫)

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本を買うときに自分の中で決めている基準はないだろうか?

私はそうなのだが、自分の基準に基づいて本を買っていくと、次第に同じような本が増えていく。その結果マンネリに陥ってしまう。

何か変わった本、それもうんと変わったものが読みたい。そんな人にオススメしたいのが今日紹介する「中二階」だ。きっとあなたの欲求を満たしてくれるに違いない。ではさっそく見てみよう。  

目次

  1. ニコルソン・ベイカーとは?
  2. 「中二階」を読む
  3. オススメ度

ニコルソン・ベイカーとは?

ニコルソン・ベイカーはニューヨーク(※1)生まれの60歳。白い髭が良く似合あう(※2)アメリカの小説家・ノンフィクション作家である。
着目すべきはその小説スタイルの斬新さ、ユニークさである。作品の多くは細かく、そして人物の意識の流れを追うものが多い。

(※1)ニューヨークと言われて一体何を思い浮かべるだろう?ちなみにアメリカ最大の都市であり、人口は800万を超える。市内総生産は東京に続く2位(※3)だそう。自由の女神などいろいろあるがやはり「NYチーズケーキ」だ。これは美味しい。もちろん本場で味わったことなどないが、大学生協には「NYチーズケーキパイ」なるものが売っており、これがまた安くて美味い。120円だったと記憶する。ちなみにNYにはさほど思い入れはない。
(※2)白い髭が良く似合うといえばやはりサンタクロースだろう。25日のクリスマスには世界中を駆けまわる(※4)。多くの子供たちから愛されているサンタクロースだがそういった話につきものの「悪い子には〇〇」という話が各国に伝わっている。黒いサンタクロースなどが有名だろうか。
(※3)東京に続く2位ということは1位が東京なのである。すごい!あの小さな面積の中でどれほどのマネーが動いているのか、私には想像もできない。
(※4)もちろん一人のサンタクロースが全部やっているわけではない。そんなことをしたらサンタは過労死してしまうだろうし、動物愛護団体からはサンタの元に苦情の電話や手紙がどっさり届くことになるだろう。サンタは世界中に存在している。日本にもサンタは一人いる(※5)
(※5)パラダイス山本さんである。公認サンタになるには数々の試験(※6)を突破し「グリーンランド公認サンタクロース教会」に認可される必要がある。7月に行われる「世界サンタクロース会議」には自宅からサンタクロースの衣装で参加することが義務付けられている。
(※6)サンタに試験なんていらないだろう? と思われた方もいるだろうがサンタクロースの仕事を思い出して欲しい。バリバリの体育会系である。なんてたって何本もの煙突を上り下りしなければならないのだから!試験は書類選考から始まり体力測定、長老との面接、身だしなみ・備品の審査、宣誓文の朗読(古文書を全てHoHoHoで朗読)。これらが終わり公認サンタ全員の承諾を得られると晴れて新生公認サンタとなる。

小説自体が12作とそれほど多くなく、日本では「中二階」「室温」「もしもし」「フェルマータ」「ノリーのおわらない物語」が翻訳されているにすぎない。しかしどれもが挑戦的でユニークな出来となっている。

「中二階」を読む

「中二階」はアメリカで刊行されると同時に、スタイルの斬新さ、ユニークさが評判を呼び、「88年代(※1)の最大の収穫」などの熱烈な賛辞を贈られた本だ。

(※1)日本で88年といえば昭和63年・皇紀2648年だ。当時の総理大臣は竹下登(※2)である。ティファニーの来日によるティファニー現象、ドラクエ3の発売、リクルート事件など様々なことがあった。新語・流行語は「ペレストロイカ」と「今宵はこれまでに(いたしとうございます)」。かなり凶悪な事件で誰もが知っている事件もこの年に発生している。
(※2)そのお孫さんがミュージシャンでタレント、俳優のDAIGOさんである。姉は漫画家の影木栄貴。

ストーリー自体はとてもシンプル。
昼休み直前、主人公の靴紐が切れてしまう。主人公は昼飯をとるついでに新しい靴紐を買い、用事を済ませ自分のオフィスがある中二階へと戻る。それだけなのだ。
しかも物語内の時間はほんの数秒である。
どういうことかというと、物語は用事を済ませた主人公が中二階へ戻るためのエスカレーター(※3)に乗ったところから始まり、中二階で下りて終わるのだ。

(※3)エスカレーター、怖くないですか?特に上野とか大井町のエスカレーター。上に行くにつれて足がガクガクしてきます。後ろなんかを振り返ったらそのまま気絶してしまいそう。

本当にそれだけで物語が成り立つのか?と思われた方もいるだろう。しかし安心して欲しい。見事に成り立ってしまっているのだ。190Pの中にうんと細かく様々なことが詰め込まれている。

何を書けばそんなことになるのか、そういう方は「イメージマップ」を思い出してみて欲しい。Aという単語を聞いて思い浮べた単語を書き、それについて思いついたものを書くという、脳内に浮かんだことを図示して目で確認できるようにする作業だ。そしてそれは「意識の流れ」にもつながることだ。

つまりこの小説は、エスカレーターに乗った主人公の飛躍する考え、空想、そして過去の出来事など普通の小説では時間を停滞させるだけだとして省いてしまうのものに着目して書かれている。しかもそれに脚注が付き、その脚注が時にはメインストーリーを放り出して何ページにも渡ってしまうのだから面白い(たとえばホチキスのデザインについての考えが細かい文字で1Pも続く!)

いわばエスカレーターに乗る主人公の見た景色を脳内に構築する主人公A、主人公Aが構築した景色を見て何かを考える主人公B、そして主人公Bが考えた事象についてさらに細かく掘り下げて考える主人公C、そんな感じだろうか。

しかしながら、こんな主人公の思考の渦の中に放りこまれた我々読者は肝心の「私」、つまり主人公のことについては何も知ることができないのである。主人公はどうやら意図的に自分のことを考えないようにしているようだ。それが意味するところ(※4)はなんだろう?

(※4)単純に考えれば自分が嫌いだから自分のことは考えないようにしていたらいつの間にかそんな癖が付いていた、ということになりそう。しかしそんなものではなくて、個性個性と主張しながら没個性に陥ってしまっている現代人についての皮肉なのではないだろうか?そもそも個性とはなんだろうか。他人と違えば叩かれ、同じであれば個性がないと叩かれる。そんな生きにくい世の中である。

何にせよ、この小説はただ変わっただけの小説ではないということだ。

オススメ度

オススメ度★★★★★
面白さ★★★☆☆
すばらしい本であることには違いないがいかんせん読むことに疲れる。しかしこの本に関しては内容もさることながら、カバーも素晴らしい。この主人公の物憂げな顔を見て欲しい。なんともチャーミングである。
中二階 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

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辞書を引くと「クリーピー」とは「身の毛がよだつような、気味の悪い」という意味だと教えてくれる。

本書もそのタイトル通り、どうも気味の悪い内容となっている。サスペンスホラーよりの本書を今日は見てみようと思う。

目次

  1. 作者の前川裕ってどんな人?
  2. クリーピーを読む
  3. 生きているのか死んでいるのか
  4. オススメ度

作者の前川裕ってどんな人?

作者の前川氏は法政大学国際文化学部の教授である。専門は比較文学・アメリカ文学だそうだ。
故に本書が最初の出版というわけではなく、英語関連の本(英会話・入試英語等)が前から出版されている。

小説に関しても「クリーピー」より前に「人生の不運」(現在は「深く、濃い闇の中に沈んでいる」と改題し、文芸社文庫から刊行されている)が出ているが、こちらはおそらく自費出版であったろうと思われるので、「クリーピー」が商業作家デビュー作ということになる。

そんな前川氏であるが、2011年に第15回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞、翌2012年に本格的に作家デビューを果す。やはり教授という仕事柄、文章を書き慣れているだけありデビュー作ながらとても読みやすい(ただし「~た。」が多いが)

クリーピーを読む

ミステリーの中でも「サスペンスホラー」よりと思われる本書。
だが、純粋な意味での「ホラー」とはまた違った怖さが潜んでいる。

本作の主人公は「高倉」。職業は大学教授である(小説内における昨今の大学教授は現実以上に大忙しである)。これは前川氏自身の投影であろう。

前川氏自身も教授ということで、ゼミや講義などで多くの学生たちと接してきたのだろう。学生の服装や話し方、ゼミの後の飲み会など、自身の経験を上手く使い小説内のリアルさを増している。

さらに穿った見方をすれば「ああ、この人(教授や講師の方々など)は普段こんなふうに学生を見ているんだな」という読み方も出来なくもない。前川氏自身の経験談なのではないか? と勘繰ることもでき、話の大筋とは全く関係ないがそんな楽しみ方もできるのも嬉しい。

さて物語は犯罪心理学者である高倉のもとに事件分析の依頼が届くことから始まる。その依頼以降、高倉の周囲で事件が頻繁に発生するようになってしまう。そして自身も事件に巻き込まれていく。

この犯罪心理学者の元に事件の分析が届き、そこから様々なことが発生するという流れだが、主人公の職業と結びついている(ように感じる)ので、物語の中に入っていきやすい。
この小説で最も重要なのがこれで、この話が現実でもあり得そうと思わせることなのだ。これがなくなると本書の面白さは半減どころか、成立も難しくなってくる。サスペンスとホラーの醍醐味が失われかねないからだ。だからこそ主人公の職業も前川氏自身が一番よく知っている職業にし、リアルさを出すために随所で工夫をしている。

だが、「クリーピー」はただ怖いだけでなく、アッと驚く展開も待っているので読み応えのある小説となっている。

そしてこの小説は現在社会へ問題を投げかけているようにも感じられるのだ。
たとえば、この小説の一番の肝、怖さの元は「隣人は誰なのか?」ということになるだろう。その疑問が不安に、そして確信へと変化していく展開が面白く先が読みたくなるのだが、これは現在だからこそ起こる不安ではないだろうか?
一昔前は近隣と付き合いが無い方が異常で、そんな状態を村八分と言ったりしていたはずだ。
だが村八分の状態でも火事や葬儀の場合は協力があったので、もしかしたら現在のほうがもっと稀薄かもしれない。だからこそ、近隣で事件が起こった時に疑心暗鬼に囚われる。
「隣に住んでいる人は善人だろうか?悪人だろうか? 生きているのか?死んでいるのか? まったくわからない」という状態が発生するのは現在だけだろう。

隣近所の付き合いが親密であれば、例えば、自分が仕事に行く間子どもを見てもらうということも可能であった(何かされるのではないか?という考えは無いというよりも恐らくタブー)
しかし現在はたとえ親密であったとしても自分の子を預けるということはしないだろう。相手を信用できないからだ。(ではなぜ他人であっても保育園や幼稚園には安心して預けれらるという考えが揺らがないのかは疑問だが。ただし最近ではそれすらも安心できない事件が起きている)

そんな問題点を含んでいるのがこの「クリーピー」だ。現代生活の不安や疑問を上手く昇華させている。

生きているのか死んでいるのか

若干のネタバレになるので未読の方はスルーしていただきたい。
本書では結局「矢島」は死んでおり、そのことを知っているのは限られた数人だけであり、「矢島」は現在も逃走中となっている。

だが果してそうだろうか?
高倉はあくまでも園子が「矢島だ」と言った死体を見ただけである。この死体が矢島でない可能性は大いにあり得る。さらに園子も矢島を庇う理由があるのだ。
もう一つ疑問点がある。いくら閉め切った部屋とはいえすべてのものの侵入を防ぐことはおよそ不可能に近い。そう。虫だ。そんな状況下で十年も死体があることを隠し通せるだろうか。それに十年ものの死体に皮膚が付いているものなのだろうか。ミイラ化したとしたら都合がよすぎるではないか。

流れ的にはやはり、死体は替え玉、本人は生きていて逃走中という方がしっくりくる気がするのだ。

オススメ度

オススメ度★★★☆☆
面白さ★★★☆☆
本書は去年西島秀俊主演で映画化されている。キャストも豪華で、特に香川照之の好演が見どころだ。
クリーピー (光文社文庫)

前川 裕 光文社 2014-03-12
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変わったタイトルは一度聞くと中々頭から出ていかないものだ。

「鴨川ホルモー」もそうだろう。

鴨川はわかるとしても、「ホルモー」って何なんだ? 
変わったタイトルには、どこか人を惹きつける魅力もある。そんな「鴨川ホルモー」を今日は見てみようと思う。

目次

  1. 万城目学ってどんな人?
  2. 「鴨川ホルモー」を読む
  3. 誰が芦屋を裏切ったか?
  4. オススメ度

万城目学ってどんな人?

作者の万城目学氏は第四回ボイルドエッグ新人賞を受賞し、2006年「鴨川ホルモー」でデビュー。
その作品の多くが関西圏を舞台にしており、そんな繋がりからか森見登美彦氏とも交友がある。「おともだちパンチ事件」の被害者側である。
代表作に「鹿男あをによし」「プリンセス・トヨトミ」など。

直木賞候補5回(鹿男・トヨトミ・マドレーヌ夫人・風太郎・悟浄出立)
山田風太郎賞候補2回(悟浄・バベル)

直木賞に関しては嫌がらせか!と突っ込みが入るぐらいノミネートされている。なかなか受賞にまで至らないが、今年こそはと毎年期待されている。

「鴨川ホルモー」を読む

「鴨川ホルモー」は万城目氏のデビュー作だ。
「本の雑誌」で2006年エンターテインメント1位になると、2007年には本屋大賞にもノミネートされた。2008年には漫画化、続く2009年には山田孝之主演で実写映画化もされた。

万城目氏が森見氏のとの対談で語っているように(ぐるぐる問答参照)「ホルモー」はあくまで大学生の青春ものである。物語は主人公安倍の一人称で語られ、個性的な登場人物とともに安倍の葛藤や苦悩を描き出す。そして読者は奇妙奇天烈な「万城目ワールド」へと誘われていく。

読み進めていく上で注目すべきは「ホルモー」という競技と登場人物の名前である。
架空の競技を書く際に一番作者が苦労するのはルール説明と競技の描写であろう。説明や描写が少なければ読者は思うようにイメージできず、書き込みすぎれば物語が停滞してしまう。
その点、「ホルモー」は「オニ」達を使役、つまり自分達が軍の指揮をとる立場となり、相手が使役するオニ達を殲滅したら勝ちと極めてシンプルな作りとなっており、余計なものがない分とてもわかりやすい。さらに合戦形式をとったことで、歴史好きや大河好きはもちろんのこと、日本史や世界史の教科書中の絵図も参考に出来るためイメージが容易になっている。

さらに「オニ」自身もコワモテの通常イメージする鬼とは(外面上は)ことなり若干可愛らしい姿になっており、愛着を持てるはずだ。

ただ競技がシンプルでインパクトに欠ける分それを補うものが必要となる。
それが「オニ語」だろう。まず「オニ語」の説明からして凄い。曰く「中年男性が洗面所で吐き気を催す際の声に似ている」というのだ。それを男女問わず町中で発しているところを想像してみて欲しい。
オニを操るには通常の言葉ではなく、「オニ語」でなければならない。あの不思議な言葉を自ら声に出して考えたのかと想像すると面白い。

さらに登場人物の名前だ。
登場人物にはそれぞれ元ネタとなる人物がおり、
・安倍=安倍晴明
・高村=小野篁などとそれぞれモチーフになった人物がいる(ちなみに小野篁も晴明に負けず劣らず不可思議な逸話も持つ人物である。六道珍皇寺の井戸や「子子子子子子子子子子子子」など非常に面白い)
なので安倍と芦屋が仲が悪いのは元ネタ的には当然なのであるし(一説では晴明は一度道満に殺されている)それが物語の中にも反映されている。

そういった点を踏まえて考えると様々なことが判明する。
例えばスガ氏が仲が悪かった相手などだ。スガ氏は自分にも仲の悪い相手がいたと発言しているが相手が誰なのかは言っていない。しかし、スガ氏の元ネタが「菅原道真」であることを考えると、反りが合わない相手はおそらく「藤原時〇さん」か「藤原〇平」にでもなるのかもしれない。

誰が芦屋を裏切ったか?

そして上のことを踏まえた上でもう一度登場人物を見てみよう。
安倍派は高村・楠木・三好兄弟の五人。
芦屋派は早良・松永・紀野・坂上の五人。
本文中では高村が「早良さんがいれた」と推察しているが、結局は誰が入れたかは判明していない。これが一人称のやっかいなところなので、安倍が知らない限り、読者も知らない。

だが考察するヒントは残されている。
登場人物の松永に注目したい。彼の元ネタは勿論「松永久秀」である。この松永久秀もなかなか面白い人物で(クリスマス停戦とか安土城の元ネタ説とか世界で初めて自爆した人とか……)あるが、彼の十八番はやはり「謀叛」であろう。しかし、この本の中では彼は一度も裏切りらしい裏切りをしていない。となると、最後の投票で裏切ったのは「松永」なのではないか?と考えられる。安倍派には三好兄弟(三人衆か四兄弟かこの際どちらでも良いが、少なくとも安倍派の方が時代的に近しい元ネタの人物が多い)もいるので、やや根拠が薄弱ではあるが可能性は高いと考える。

オススメ度

オススメ度★★★☆☆
面白さ★★☆☆☆
今作最大の謎はレナウン娘なんてどっから持ってきたのかということ。どこで「これや!」ってなったんだ。それが知りたい。
鴨川ホルモー

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今後行ってみようと思う各地の祭を今現在私が知っているものだけまとめてみた。

今後随時追加予定。奇祭でなくとも各地のお祭り・伝統行事もここに追加していきます。行ったものに関しては後々記事に起す予定。

なお今回は「奇祭・杉岡幸徳」「日本の奇祭・合田一道」「とんまつりJAPAN・みうらじゅん」各書を参考にさせてもらった。

月別 各地のお祭り・行事

  1. 1月
  2. 2月
  3. 3月
  4. 4月
  5. 5月
  6. 6月
  7. 7月
  8. 8月
  9. 9月
  10. 10月
  11. 11月
  12. 12月

1月

・尻振り祭り(福岡県 1月8日)
・ひげなで祭り(千葉県 1月第2日曜日)
・ヘトマト(長崎県 1月16日)
・むこ投げ・すみ塗り(新潟県 1月15日)

2月

・一夜官女祭り(大阪府 2月20日)
・おんだ祭り(奈良県 毎年2月の第一日曜日)
・国府宮はだか祭り(愛知県 旧暦1月13日)
・スミ付け祭り(岩手県 2月第1土曜日)

3月

・ジャランポン祭り(埼玉県 3月15日に近い日曜日)
・姫の宮 豊年祭り(愛知県 3月15日直前の日曜日)
・田縣祭り(愛知県 3月15日)
・裸押合い祭り(新潟県 3月3日)

4月

・うなごうじ祭り(愛知県 4月7・8日に近い土・日曜日)
・桶がわ祭り(通称こじき祭り 岐阜県 4月1日)
・かなまら祭り(神奈川県 4月第1日曜日) 
・強飯式(栃木県 4月2日)

5月

・鶴岡天神祭(山形市 5月25日)
・鍋冠祭り(滋賀県 5月3日)

6月

・あがた祭り(京都府 6月5日~6日未明)
・キリスト祭り(青森県 6月第一日曜日)
・しねり弁天たたき地蔵(新潟県 6月30日)
・つぶろさし(新潟県 6月15日)

7月

・牛乗り・くも舞(秋田県 7月7日)
・お札まき(神奈川県 7月14日)
・蛙飛行事(奈良県 7月7日)
・水止舞い(東京都 7月14日)
・撞舞(茨城県 7月下旬)

8月

・護法祭(岡山県 8月14日~15日未明)
・ヨッカブイ(鹿児島県 8月22日)

9月

・芋くらべ祭り(滋賀県 9月1日)
・お熊甲祭り(石川県 9月20日)
・神ころばしと七五膳(静岡県 9月上旬 ※三年に一度の開催
・パーントゥ(沖縄県 旧暦9月か10月頃)

10月

・猿追い祭り(群馬県 旧暦9月中の申の日)
・抜き穂祭(愛媛県 10月中旬)
・笑い祭り(和歌山県 体育の日直前の日曜日)

11月

・強卵式(栃木県 11月23日)
・子供強飯式(栃木県 11月25日)

12月

・悪口祭り(栃木県 12月31日~1月1日)
・悪態祭り(茨城県 旧暦11月14日)
・あらい祭り(千葉県 12月14日)
・ひょうたん祭り(大分県 12月第1日曜日)

※尚日時・開催日は突如変更のおそれもあるので実際に行く場合は観光課にお問い合わせください。
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日本人は無宗教と言われることが多い。実際「あなたはどの宗教を信仰していますか?」なんて聞かれてたらはっきりと答えられる人は少ないだろう。

だが、はたしてそうだろうか? 本当に日本人は無宗教なのだろうか?
そんなわけで今日は「日本の民俗」という本を見てみようと思う。

目次

  1. 日本の民俗~祭りと芸能~
  2. 日本の民俗~暮らしと生業~
  3. とんまつりJAPAN~日本全国とんまな祭りガイド~
  4. そんなわけで

日本の民俗~祭りと芸能~

日本の民俗 祭りと芸能 (角川ソフィア文庫)

芳賀 日出男 KADOKAWA/角川学芸出版 2014-11-21
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芳賀日出男氏は写真家・民俗研究家だ。折口信夫の国文学の講義を受けるうちに「来訪神」「マレビト」について興味を持ったそうだ。
「神は季節の移り目に遠くから訪れ、村人の前に姿を現す」と折口は語った。
そこで芳賀氏はそれが本当ならば、写真に収めることができるかもしれない、そう思ったらしい。そして日本人の暮らしに密着した写真を撮ることになる。

こちらでは主に「祭り」と「芸能」がとりあげられている。
神の依代である御幣や、神を招くための清めや祓い、田の神に豊作を願う田植えの祭りなど多くの写真と共に詳しく解説してくれている。あえてすべての写真が白黒であるが、その写真達からは動的な力強さが伝わってくる。

そもそも「まつり」は神を祀ることだとされている。
とするならば、現在も各地で続く「祭り」もそこには神の存在があるはずだ。そしてその祭りを毎年楽しんでいる。今でこそすべてのものに神が宿るという考えは薄くなり、自分は無宗教だ・神なんかいないと思っている人も多いだろうが、そうであっても初詣には行くし、お盆には祖霊に参る。

このような民間信仰を「民俗宗教」というそうだ。神話を語り、万物に神が宿り、先祖の守護を信じそれらのために儀式を営むことと定義されるらしい。民俗宗教を駆逐しようとする創唱宗教に対し、民俗宗教はそれらを吸収・習合して来た。祭りや民間信仰が仏教に近かったりするのもそのためであろう。

とすると、日本人は定まった名前の宗派が無いというだけで、実はその多くの行動、習慣は「民俗宗教」に規定されているものであり、それに則った生活を送っているわけである。

日本の民俗~暮らしと生業~

日本の民俗 暮らしと生業 (角川ソフィア文庫)

芳賀 日出男 KADOKAWA/角川学芸出版 2014-11-21
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そしてさらにその時代に生きる人にまで近づいたのがこちらの「暮らしと生業」である。
だんだんと簡略化されては来ているが「正月」や「盆行事」、そして日本人とは切っても切れない「稲作」について、これまた豊富な写真と詳しい解説が載っている。「巫女」についての章では「遠野物語」にも出てくる「おしら様」の写真ものっている。

こちらもやはり写真に写る人々は生きいきとしている。親戚付き合い・ご近所付き合いはとても重要なものだったのだと改めて知ることができる。

今でこそ我々が普通だと思っている文化・風習も何年か、何十年かしたらそれは忘れ去られたもの、過去のものとして捨て去られているかもしれない。少しでもかけがえのないもの、良いものを未来へ残す工夫をしなければならない。そんな気持ちを起こさせてくれる二冊だ。

とんまつりJAPAN~日本全国とんまな祭りガイド~

とんまつりJAPAN―日本全国とんまな祭りガイド (集英社文庫)

みうら じゅん 集英社 2004-07
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上記二冊の本を読み、学者でも何でもない今の自分に何が出来るか。そう考えたときに思い浮かんだのは祭りへの実際の参加である。しかも有名どころではない、あまり知られていない祭りに実際に参加しその祭りの起源を調べてみようじゃないか。そう考えたわけである。

そこで私はこの本を手に取った。
みうら氏の軽妙な語りとその祭りの挿絵や写真が相まって非常に面白い。地元にこんな祭りあったんだ、と驚愕するとともに、紹介された地元の人も首を傾げるシーンがちらほら。このままではいかん!

この本には18の祭が紹介されている。
とくにこの表紙の和歌山・笑い祭りはとてもインパクトが強い(この横から覗いてるおっちゃんは誰なんだ?)。なんとか時間をつくりつつ全国47都道府県の祭を巡ってみたいものだ。

そんなわけで

全国お祭リストを作成してみようと思っております。
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その小説内に書かれていることほぼ全てが伏線であり、またメタ的要素を多分に含んでいる小説があっただろうか?

今日紹介する「首無の如き祟るもの」はそんな小説の一つだろう。これを読めばあなたもきっとミステリー、いや読書が好きになるはずだ。あなたをきっと驚きの連続へと導いてくれる。

目次

  1. 三津田信三とは?
  2. 流浪の怪奇小説家・刀城言耶
  3. 実際読んでみて~ネタバレ無し~
  4. 実際読んでみて~ネタバレ有り~
  5. オススメ度

三津田信三とは?

ミステリーランキングの常連と言っても過言ではない三津田氏。
代表作は「刀城言耶シリーズ」や「死相学探偵シリーズ」だろう。そんな三津田氏は出版社勤務を経て、2001年「ホラー作家の棲む家」で小説家デビュー(1994年に鮎川哲也が編集を務めた公募アンソロジー「本格推理3 迷宮の殺人者たち」に「霧の館 迷宮草子」が採用されている)

その後、ホラー小説やミステリー小説を精力的に発表を続け、2010年には「水魑の如き沈むもの」が第10回本格ミステリ大賞を受賞した。

刀城言耶シリーズは「幽女」以降出ていないのだが、今年こそはと期待している。

流浪の怪奇小説家・刀城言耶

そして「刀城言耶シリーズ」の多くで探偵役を務めるのが刀城言耶だ。
元華族の血筋である。ジーンズを愛用し、行く先々で奇異な目で見られている。そして何か面白そうな「怪異譚」が聞けそうとと分かると態度が豹変。場所相手を問わず、相手が話すまでしつこくまとわりつくスッポンのような人物だ。しかしながら最初から怪異を信じきっているわけではなく、合理的解釈が必要な場合はそのような判断を下す。

しかしどこか憎めない人物である。その点では「金田一」に近いものを感じる。そんな刀城言耶が事件を引き寄せるのか、それとも言耶が事件に引き寄せられるのか。出かける先々で事件に遭遇し、不本意ながらも探偵役を務めることとなる。

そして時系列だが、
「厭魅」→「凶鳥」→「首無(事件発生)」→「山魔」→「水魑」→「幽女」→(首無事件解決)となりそうである。番号順に読むと微妙につながらない時があるので、帯の順番で読むことをお勧めします。

ちなみにこの「刀城言耶シリーズ」はほとんどの作品が何かしらのミステリランキングに選出されている。

実際読んでみて~ネタバレ無し~

旧家・怪異伝承・首無し死体・どんでん返し等々ミステリ好きには堪らない要素満載である。
しかし、怪異現象や諸所の設定に現実味を持たせるためにやはり文章は多くなっており、600P越えとなっている。だがページ数を気にさせないほどの面白さがあるので、量はさほど気にはならない。

この要素(旧家の対立・双子など)だけ見ると、横溝の二番煎じか……と思われる方もいるかと思うがそうではない。横溝やカーの世界では装飾でしかなかった「ホラー」という要素をミステリーと対等の関係で融合できないだろうか? と思案した結果生まれたのが「刀城言耶シリーズ」なのだ。そして「首無」ではそれが結実したと言ってよいだろう。

だが本作はその中でも異質である。というのも「言耶」はほとんど登場しない。
この物語は斧高という少年の視点と、私こと高屋敷妙子の視点で語られている。言耶が登場するのはほんの数場面しかないのだ。

また、今作にもシリーズ恒例のどんでん返しの波状攻撃、さらに○○の分類(今回は顔の無い屍体の分類)もしっかり存在しています。

さらに今回も参考文献にちゃっかり架空の人物を混ぜたり(閇美山犹稔)、「書斎の屍体」(架空の雑誌)に実在人物を登場させたり(幾守寿多郎以外は全員実在の人物。タイトルは微妙に変更してある)遊び心満載である。

また三津田氏も「江川蘭子」が好きなのか、ちゃっかり登場している。

実際読んでみて~ネタバレ有り~

ではネタバレありで見てみよう。
未読の方はスルー推奨である。


①江川蘭子に関して
以前も書いたが序盤(~50Pぐらいか)に緻密な伏線を張り、かつ上手く回収できている作品は傑作になる可能性が高い。本書も例にもれず、わずか3P目で犯人に関わる重大な伏線(~その一部は)が張られている。また「はじめに」でも核心にせまる重要な伏線が多く張られているが、中でも「一連の事件の真犯人が私(=書き手)自身ではないか」という疑問に対しての否定が後々重要となってくる。さらにここでは蘭子の説明は「本格推理」作家となっている点も見逃せない。また細かいが、「江川蘭子」は世が世なら侯爵という部分。華族令を参考に見てみて欲しい。

②長寿郎と妃女子に関して
ここが本作の最大のポイントである。これが解ければ一気にほとんどの疑問が解決へと向かう。
まず注目すべきは出産の際のカネの行動と兵堂の表情だろう。出産は現在でもかわらず重要なものとして見られている。出生率が低かった過去では尚更、さらに跡継ぎが絡めば重要度は増すのは当然だろう。そこでカネは「禁厭・呪い」を施しているのだが、今の考えから行けばその呪いが意味するものは安産であろう。しかしながらここに淡首様という問題が絡むことでその禁厭は別な意味も併せ持つことになる。安産は当然として、いかにして神から逃げるかである。子供は「七つまでは神様の子」であると信じられてきた経緯がある。そんな事情からカネは強力な禁厭を施すことになった。そこを考えてみると、女の子が生まれた!と聞いた時の兵堂の表情にも納得が行くだろう。
また、死亡後の葬儀の仕方である。なんとなくだが、私は勝手に三津田氏は「葬儀」の方法や種類に強い興味を持っているのではないかと考えている。なので葬儀について考えると結構謎が解けるパターンも多いのだが、今回も葬儀が重要な伏線となっている。土葬が中心の村で(1967年時では火葬67%、土葬33%だったらしいので、この時代設定がそれよりも以前であれば土葬の割合も増えているであろうと考えられる。よってそこまで土葬は珍しいことではない)火葬をしたという点に着目してほしい。ミステリーで何かが燃えたらそれは「何かを隠そうとしている」と疑うべきである。

③刀城言耶について
この「首無」は「刀城言耶」シリーズのナンバリング作品ではあるが、言耶はほとんど登場しない。
第10章・旅の二人連れ以降、言耶は一切登場していない。ではこの時「本物の言耶」はどこにいたか。「首無」の事件の裏で、奥戸の「山魔」事件と関わり合い、そっちに行っていたのである。これは「水魑」内での会話で確認が取れる。また同時に「水魑」では、まだ「蘭子」が生きており、「血婚舎の花嫁」を連載し始めたことが語られている。
解決編で登場する言耶が本物ではないと考えることができる要素もある。
・「15歳は下に見られるでしょ」という発言
・未知の怪異譚を聞いても無反応
など細かいがしっかりと伏線が張ってある。

ではこの場面に登場する「言耶」は誰だったのだろうか。
様々な考察が可能だ。これは実際読んでみて自分なりの考えを導き出したほうが楽しいだろう。

オススメ度

オススメ度★★★★★
面白さ★★★★☆
鮮やかな伏線回収と緻密な設計で書かれた本書を一度読めば他のシリーズを読まずにはいられなくなるだろう。
首無の如き祟るもの (講談社文庫)

三津田 信三 講談社 2010-05-14
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昨今誰もが気軽に小説を書ける時代になった。ネット上にも小説やSSが溢れ、さらにはそこから商業作家へとデビューしていく人もいる。

だが小説を書こうと思っても、何を書けばいいのかわからない、どう書いたらいいのかわからない、そんな人も多いのではないだろうか?

今回はそんな人に役立つ小説指南書を紹介していきたいと思う。少しでも役に立てば幸いだ。

目次

  1. 「物語の体操」大塚英志
  2. 「ミステリーの書き方」 日本推理作家協会編
  3. 「売れる作家の全技術」 大沢在昌
  4. 「小説の技巧」 デイヴィッド・ロッジ
  5. 「場面設定類語辞典」 アンジェラ・アッカーマン+ベッカ・パグリッシ
  6. まとめ

「物語の体操」大塚英志

物語の体操 物語るための基礎体力を身につける6つの実践的レッスン (星海社新書)

大塚 英志 講談社 2013-08-23
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元朝日文庫から出ていた「物語の体操」を星海社新書から新しく刊行。
本書の最大の特徴は「課題形式」にある。ただ読むだけではなく、こちら側も出された課題をこなす必要があるのだ。

第1講ではいきなり「プロット100個作成」という課題を突き付けられる。しかしその作成に至るまでの手順、さらには裏ワザを教授してくれているので、初心者にはありがたい本だろう。

その後もレッスンが続くのだが、全ての課題をこなし終わった後には自分自身の成長を実感できるはずだ。

この本は初心者にオススメだ。
特にどう書いたらいいかわからない・話が作れない・話に矛盾が出るという人はこの本を熟読すると良い。

「ミステリーの書き方」 日本推理作家協会編

ミステリーの書き方 (幻冬舎文庫)

日本推理作家協会 幻冬舎 2015-10-08
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総勢43人もの現役作家が自身の執筆方法や、アイデアの構想方法などを披露する。
「ミステリーの書き方」と銘打っているだけあって、内容はミステリーに特化しているが、「小説を面白くする方法」や「プロットの作り方」「セリフ回し」などはどのジャンルにも共通することが書いてあり大変参考になる。

また、アイデアの発想方法、伏線の貼り方、トリックの仕掛け方などなど作る側にも読む側にも興味深い内容となっている。

さらに有難いことに、巻末には「ミステリーを書くためのFAQ」まで設けてあり、書き手が一度は思うであろう疑問や不安が箇条書きで一覧になっている。気になった時はすぐ探せるのはありがたい。

この本は初心者~中級者向けだ。
小説を書いているということが前提になっている。しかし書く際には非常に参考になること間違いない。ミステリーを書くなら必須級と言える。

「売れる作家の全技術」 大沢在昌

小説講座 売れる作家の全技術 デビューだけで満足してはいけない

大沢 在昌 角川書店(角川グループパブリッシング) 2012-08-01
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小説・野生時代誌上にて連載していたものが本として刊行された。
作家てこんな仕事なんだ!ということも分かる非常に良い本となっている。作家を目指すのであればもう既に作家の懐事情や出版業界の今なんて分かりきっていると思うが、この本を読んで改めて「それでも自分は作家になりたい!」と思える人は作家への道は開かれるだろう。

この本はとにかく非常に丁寧でわかりやすい。
初心者がやりがちな失敗を例を見ながら追えるというのも有難い。特にキャラクターの作り方や会話文の秘密、文章と描写力を磨けなど適切なアドバイスが多い。

本書の中で大沢氏が何度も言うことは「本を読め!」と「小説にはトゲが必要」の二点だろうか。
特にミステリーを目指すのであれば1000冊は読む必要があるとのこと。その通りだ。読書は書くための準備運動、筋肉作りなのだ。読書をしない人間がデビューをしてもすぐ消えていなくなるのはもう分りきっている。

この本は初心者から中級者向けだ。
本気で作家を目指すのであれば一度は目を通しておきたい本だろう。

「小説の技巧」 デイヴィッド・ロッジ

小説の技巧

デイヴィッド ロッジ 白水社 1997-06
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小説にはどんな技法・技巧が使われているのか?それを例文と共に詳しく解説したのが本書だ。
書き出しから始まり結末まで実に50もの技巧が紹介されている。

特に作家を一番悩ませるとも言われる「書き出し」、ただの説明になってしまい、場を停滞させがちな「人物紹介」は熟読すべきだろう。

また、なかなか日本では使われない技巧も多いので、それを自分の小説の中に生かすにはどうしたら良いか?などを考えながら読むと一層自分のためになるだろう。さらにこの本自体が優れた本の紹介本とも言える。例文にある小説は殆んど有名作ばかりなので読み漏れが無いようにしたい。

この本は上級者向け。
今のままでは駄目、もしくはより上を目指したいという人にお勧めだ。

「場面設定類語辞典」 アンジェラ・アッカーマン+ベッカ・パグリッシ

場面設定類語辞典

アンジェラ・アッカーマン,ベッカ・パグリッシ フィルムアート社 2017-04-25
売り上げランキング : 203
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今年の4月28日に出たばかりの本がこちら。
「辞典」と銘打ってあるが、読み物に近い出来である。とにかく「設定」の重要さ、大切さを説く。この本ははっきり言って紹介したくはなかった。それほどこの本が手元に有るか無いかで小説の出来、面白さが違ってくる。見せるべきか述べるべきかなど、とにかくそれぞれの「設定の繫がり」を重要視し、豊富なアドバイスを提示してくれている。

後半部は郊外と都市とに分かれ、五十音順に場面が紹介されている。さらにその場面ではどんなことが起こり得るか?またどんなものがあるか?匂いは?など見落としがちな要素、また何か謎に繫がる要素を箇条書きでまとめてくれている。さらにその場面設定で得られる効果、設定のヒントなども載っており読んでいるだけで物語が頭の中に湧いてくるようだ。

巻末にはエクササイズやプランニングツールもあり、創作する際に役立つはずだ。

この本は初心者から上級者までほぼ必須と言える。
読んで楽しい、作って楽しい、創作の醍醐味が味わえる。

まとめ

どうだっただろうか?
今日紹介した本以外にも様々な本があるが、まずは気に入ったものを読んでみて、小説創作を始めたり自身のレベルアップに繋げてほしい。
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夜は短し歩けよ乙女が現在大ヒット上映中である。モリミストとしては大変喜ばしいことだ。
どうやら「詭弁踊り」がヤバイということで各所で話題になっているようだ。

そんなわけで今日はアニメ映画の大ヒットを祝して、森見氏最初で最後の対談集「ぐるぐる問答」を見ていこうと思う。

夜は短し歩けよ乙女」の記事はこちらから。


目次

  1. 一人目・劇団ひとり
  2. 二人目・万城目学
  3. 三人目・瀧波ユカリ
  4. 四人目・柴崎友香
  5. 五人目・うすた京介
  6. 六人目・綾辻行人
  7. 七人目・神山健治
  8. 八人目・上田誠
  9. 九人目・羽海野チカ
  10. 十人目・大江麻理子
  11. 十一人目・萩尾望都
  12. 十二人目・飴村行
  13. 十三人目・本上まなみ
  14. 十四人目・綿矢りさ
  15. 番外編・森見登美彦(過去)
  16. オススメ度

一人目・劇団ひとり

森見氏人生初の対談相手は芸人・劇団ひとり氏である。
「陰日向に咲く」や「青天の霹靂」などの著書がある。しかしながら山岡春樹のイメージがいまだに頭から離れないのは私だけだろうか?

森見氏は「本物の芸能人だ!」と興奮したとかしないとか。「笑い」や「妄想」について二人で熱く語っている。

二人目・万城目学

プライベートでもよく親しくしているという二人の対談。
小説の舞台も関西が多い二人。おなじ京大出身の二人が醸し出す雰囲気はどこか似ている気がする。
森見氏が本屋大賞授賞式で放った「おともだちパンチ」事件はあまりにも有名。
代表作は「鴨川ホルモー」「鹿男あおによし」など。

そんな二人の対談はかなりゆる~い感じに。デビューに至るまでの話を赤裸々に語っている。ちなみに対談中に出てくる百閒先生の「ノラや」は私もおすすめ。

三人目・瀧波ユカリ

漫画家・瀧波ユカリ。
「臨死!!江古田ちゃん」がアフタヌーン四季大賞を受賞。史上初の四コマでの受賞であり、即連載が決まった。2011年にはドラマ化もされた。あの印象的な絵が魅力的だ。

しかしこの二人を対談させよう!とどのように思い至ったのか。森見氏は「乙女」について突っ込まれたらと戦々恐々だったようだ。だが意外にも二人には共通点が。乙女と男について話している。

四人目・柴崎友香

大阪府生まれの作家である。
「その街の今は」で第23回織田作之助賞大賞・第57回芸術選奨文部科学大臣新人賞。14年には「春の庭」で第151回芥川賞。

二人は同じ関西出身ということで関西ネタで大いに盛り上がる。どうやら京都に住んでいる森見氏よりも柴崎氏のほうが京都を満喫しているようだ。そして二人の対談は小説装置としての京都や関西弁へと移っていく。

五人目・うすた京介

御存じ「すごいよ!!マサルさん」や「ピューと吹く!ジャガー」の作者・うすた京介氏。森見氏が大ファンだそうで、対談が実現。

実際に会ってみると、作品から受けるイメージとは違って大変カッコイイとのこと(確認してみたら本当にダンディでカッコイイ!)森見氏は文学とはジャガーの詩であるという名言を残す。

六人目・綾辻行人

言わずと知れた新本格派の旗手・綾辻行人氏。森見氏とは京大の先輩後輩という間柄である。
バックが黒の写真というのも相まって威圧感や妖気の類が立ち昇ってくるのが見えるよう。「館シリーズ」や「殺人鬼」は大変オススメ。

今回の対談の中で一番読んでいて面白かった。綾辻氏の語りが想像通りというか、妙にしっくりきたからかもしれない。京都についての話題から、ミステリー・怪談まで様々なことを話している。

森見氏は入学当初、ミステリ研の部室の前まで行ったらしい。もし入っていたらどうなっていたのだろうか……?

七人目・神山健治

アニメーション監督。
森見氏のファンを公言している神山氏。「東のエデン」にもその影響は少なくないとか。
そんな二人の対談アニメの脚本と小説の違いなど多岐にわたる。いつか森見氏に脚本をお願いしたいという神山氏。それが実現する日はくるのか!?

パート2では森見氏の「新釈・走れメロス」について語る。
神山氏の「自分が宮崎駿にナウシカのリメイクしたいって言うようなもん」という例えはとてもわかりやすい。

八人目・上田誠

脚本家・演出家。
今回のアニメ映画「夜は短し歩けよ乙女」の脚本も上田氏が担当している。そんな二人は実は2009年に対談をしていた!内容はズバリ自分の作品の作り方。やはり一人一人作り方は異なるのだなあと妙に納得。メモの仕方や保管なども参考になる部分が多い。

ちなみに上田氏は「四畳半神話体系」の脚本も担当している。アニメ脚本はそのときが初めてだったそう。森見氏は脚本が上田氏だと聞いて安心したそうだ。

九人目・羽海野チカ

デビュー作の「ハチミツとクローバー」はアニメ化・映画化・ドラマ化と大ヒットを記録。さらに現在「3月のライオン」が大ヒット連載中。藤井君の活躍で今後も出版部数が伸びそうだ。うかつに読むと涙が止まらない。将棋漫画なのに!

羽海野氏も森見氏のファンだという。そんな縁でか、文庫版「乙女」ではイラスト付きの解説も収録されている。さらに森見氏は「3月のライオン」を愛読中のよう。

羽海野氏はハチクロの書評を探していたら、森見氏のブログ(この門をくぐるものは一切の高望みを捨てよ)に遭遇。そこでファンになったそうな。確かにこのブログはもはや一つの小説のようで読んでいて面白い。

二人は愛すべきダメ人間にんついて大いに語る。

十人目・大江麻理子

作家の特権を行使して対談が実現!笑

「モヤさま2」にはまっていた森見氏は「誰と対談したいか?」という問いに「大江さん!」と即答。
そんなわけで対談が実現。この対談の見どころは森見氏のテンパり具合と言い訳。二人はモヤさまと森見氏の世界観に共通するものについて話しあう。

十一人目・萩尾望都

SF・ファンタジー漫画のレジェンドである。
この時の対談が縁で「ペンギン・ハイウェイ」の文庫解説が実現。どこか上品な雰囲気を漂わせている対談である。萩尾氏のお気に入りの登場人物は「数学氏」だとか。渋すぎ!

アイデアの創作はどうするのか?などなどこれまた興味深い話が盛りだくさん。
ちなみに二人は現在「日本ファンタジーノベル大賞」の審査員。

十二人目・飴村行

2008年「粘膜人間」で15回日本ホラー大賞長編賞を受賞しデビューした飴村氏。「殺人鬼」に負けず劣らずな内容であると思うのだが、どうでしょう。

この「ぐるぐる問答」の購入を決意したのは実は「飴村行」の名前があったからである。ファンと言うわけではないのだが、二人の作風は正反対なのにどんな対談をするのか気になったのだ。だが独特の世界観という点では類似点があるかもしれないが。

しかし森見氏は「粘膜シリーズ」のファンだった!さらに飴村氏も「乙女」が好きだと言う!
対極に位置する二人だと思われたが、対談は盛り上がり進んで行く。彼女が本棚を見たときの行動・発言はとても笑わせてもらった。

十三人目・本上まなみ

「太陽の塔」に出てくる「まなみ号」の元ネタの女優さん。
森見氏の長年にわたる憧れの人である。今回収録されている対談はリベンジ時のものらしい。やはりとても緊張したらしい。

10年後(2023年)にはハードボイルドものを!という本上氏の依頼に森見氏はどう対処するのか!?期待して待っていよう!

十四人目・綿矢りさ

「蹴りたい背中」で芥川賞。金原氏とのダブル受賞は連日ニュースを賑わせた。
私は文学系の本は読まず嫌いしているのだが、インストールや蹴りたい背中は割と楽しく読めた。綿矢氏はタイトルがドSであることでも有名(蹴りたい背中・かわいそうだね?・勝手にふるえてろ等)

万城目・綿矢・森見の三人で御飯にいったりもするようだ。とても面白い人だそう。
二人は2ちゃんねるの都市伝説スレや怪談、怖い話で盛り上がる。

番外編・森見登美彦(過去)

森見登美彦、作家である。
この過去の自分との対談がおまけ要素で収録されている。SFですね、これは(笑)
きっと書いていて恥ずかしかったに違いない。ごく短い文章の中にも、しかも対談形式であるにもかかわらず自分らしさを詰めこんでくるのはさすがである。

オススメ度

オススメ度★★★☆☆
面白さ★★★☆☆
モリミスト的には必須本。カバーも自身にゆかりのある生き物たちと対談してい場面が描かれておりなんともほんわかする。
ぐるぐる問答: 森見登美彦氏対談集

森見 登美彦 小学館 2016-10-25
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数多くの小説が毎年出版される中、かつてここまで狂ってる小説があっただろうか?

2006年に出版されるやいなや様々な方面で物議を醸し出したこの「独白するユニバーサル横メルカトル」そんな本を今日は見ていこうと思う。


目次

  1. 怪人・平山夢明
  2. そして被害は拡大す
  3. C10H14N2(ニコチン)と少年――乞食と老婆
  4. Ωの聖餐
  5. 無垢の祈り
  6. オペラントの肖像
  7. 卵男
  8. すさまじき熱帯
  9. 独白するユニバーサル横メルカトル
  10. 怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男
  11. オススメ度

怪人・平山夢明

作者・平山夢明とはどんな人物なのだろうか。
平山夢明氏は実話怪談や、超怖い話シリーズ、東京伝説シリーズなど多くのホラー・怪談物を手がける傍ら、多くの短編集も発表している人物だ。

2010年には「ダイナー」(カバーとても美味しそうな写真!)で吉川英治文学新人賞最終候補。第28回
日本冒険小説協会大賞、第13回大藪春彦賞を受賞した。

そして問題の本書「独白するユニバーサル横メルカトル」は2006年に誕生。後に多くの被害者(?)を出すことになる――。

そして被害は拡大す

手始めに光文社刊「異形コレクションシリーズ/魔地図」に寄稿した「独白するユニバーサル横メルカトル」で、2006年の日本推理作家協会賞短編部門賞を獲得。たしかにこれはまだ納得できる。本書の中でもまだまとも(?)なので、一般人にも引かれることはないだろう。さらに「これはミステリーです!」と言われると、なんだか納得してしまいそうな出来である(実際ミステリー)

しかしどこで手違いが起ったのか、同タイトルの短編集が2007年度版「このミステリーがすごい!」で国内部門1位を獲得。「このミス」といえば年末ミステリー大賞の大御所である。そこで1位を獲得すれば、当然大きな売り上げが見込める。

――そこで何が起ったか?
これは憶測だが、このミスや文春ミステリーの上位に入った本を何も考えずに(下見せずに)買う層が多くいたのでは、と考えられるのだ。ミステリー買ったつもりが何だかおかしなものが紛れている。つまり異物混入事件である。その結果、多くの被害者を生みだすことに成功したのだ。(私もそんな一人)

そう。この本にあるのは狂気である。あらん限りのエログロ・残酷描写・胸糞描写を詰め込んだスプラッター寄りのホラー小説だったのである。ミステリーの皮を被ったホラーなのだ。

そんなミステリー成分少なめの短編集の中身を見てみよう。

C10H14N2(ニコチン)と少年――乞食と老婆

たろうくんを主人公とする現代版童話、暗黒童話のような物語。学校でいじめにあうたろうは、逃避行動からか子供が近づいてはいけない湖へと向かう。そこで一人のホームレスと出会う――

「冒頭になんてもん持ってきやがる!」
これが私の率直な感想である。立ち読みしたらそっと棚に戻すであろうこと間違いなし!
文体はですます調で、おとぎ話らしい雰囲気は出ている。しかし登場人物はそろいもそろって腹立つようなのばかりである。食事中読むことはお勧めしない。

読み終わったらもう一度タイトルを声に出して読んでみよう。脱力必至である。

Ωの聖餐

「俺」はとある事情から「ある動物」の世話を命じられた。しかしそいつのエサは人間の死体だった――

一話目とは異なりとにかくグロい。そしてなんだか臭い。
カニバリズムどんとこい!という方にはオススメだ。しかし、ただのカニバではなく、そこは作家である。少し面白い趣向が凝らしてある。

ちなみにカニバと聞いてもピンとこないかもしれないが、日本でも割と最近まで人間の内臓や胎児の黒焼きが病気に効くという俗信が信じられていたりだとかで、そんな事件が起きている。

無垢の祈り

義理の父からは暴力を受け、頼みの母は宗教に染まる。そんな家で暮らす少女が救いを求めたのは連続殺人鬼だった――

これが一番きつい。精神にダイレクトアタック。
女児が義父から虐待され、それが原因でクラスでもいじめられる。そして殺人鬼に援けを求めるしかない状態になっていても誰も助けようとはしない。見てみぬふりという現在の社会を痛烈に諷刺しているように思われる。

結末はどちらともとれる。だが本書は「ホラー」であり、救いがないということが「祈り」のテーマである気がする。そして伏線を踏まえて「それ」が何であるか考えるとふみがどうなるかは自ずと判明するはずだ。

オペラントの肖像

「オペラント条件付け」が徹底された世界。この世界では芸術が人を堕落させる悪であるとして批判され、所持しているだけで死刑となる。そんな芸術を信仰する人々を取り締まる主人公はひょんなことからカノンという女性を救おうとするが――

ディストピア小説。砂漠で発見したオアシスのような安心感を我々読者に与えてくれる。
SFの王道ではあるが、短編ではやはり無理があったか。中・長編で読んでみたいと思うがどうだろう。

卵男

連続殺人鬼である私こと「卵男」。奇妙な岩牢に移送され死刑になる日を待っていたが、ある日205号と名乗る男が現われる。私は205号と次第に会話をするようになるが――

これもSF色が強い。作品の出来、面白さではこの短編中トップクラス……なのだが既視感が強い。どこかで見たような。嵐の前の静けさ。

すさまじき熱帯

俺は一攫千金のチャンスを求め、熱帯にやってきた。組を裏切った奴を殺したら一億。俺は聞いたこともない国へと出発する。

「これはひどい」
ついに暑さでやられたか!?とまず作者の頭の中を疑いたくなるような内容。
ぶっ飛びどころか崩壊している。見どころは現地の人々が話す言葉だ。
「垂乳根のお釜崩れる毛脛かもかな!」(201頁)
こんな言葉を考えていた時の精神状態が知りたい。それとも本当に意味のある言葉の当て字だろうか。

独白するユニバーサル横メルカトル

自我を持つ私こと「建設省国土地理院院長承認下、同院発行のユニバーサル横メルカトル図法による地形図延べ百九十七枚によって編纂された一介の市街地道路地図帖」が目撃したことと、その顛末を淡々と語る。自我を持つ地図帖が見ていたものとは――。

表題作。ホラー・ミステリーのバランスも良く一番まともな内容になっている。故に感想は少ない。
擬人化した地図たちの会話を楽しんでみるのはいかがだろうか?

怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男

強迫性障害を持つMC。彼は拷問を生業としていた。しかしある日、拷問を受けても恐怖を示さない女性が送られてくる――

良くも悪くも無難な短編(ここまで読んだせいで麻痺している可能性もあり)
冒頭のピザ以外はまともな感じである。拷問の描写はあるにはあるが、非常にライトな出来となっている。

オススメ度

オススメ度★☆☆☆☆
面白さ★★★★☆
合計★五つ
自らすすんでこの小説を誰かに薦めるだろうか?
しかしながら今までにない境地の開拓や、既成概念の破壊には持って来いである。
独白するユニバーサル横メルカトル (光文社文庫)

平山 夢明 光文社 2009-01-08
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